米Extreme Networksで最高技術責任者(Chief Technology Officer)と最高製品責任者(Chief Product Officer)、サブスクリプション事業担当ゼネラルマネージャーを兼務するナビル・ブカリ(Nabil Bukhari)氏
――AIで運用を効率化しようとする取り組みがネットワーク業界で加速しています。
ブカリ AIは様々な場面で使われるようになりましたが、ネットワークの世界では、誰もが生成AIを知るようになる前からAIが存在していました。我々も5年前から、AI技術に基づいた製品を手掛けています。
ユースケースも様々です。運用の自動化やトラブルシューティングに活用するほか、ユーザー体験のリアルタイム解析や管理、ネットワークのプランニングやWi-Fiのスペクトル管理など多くの用例があります。
ただし、ネットワーク業界はこのAIOpsを1つの限界として捉えていて、「AIOpsの後に何をするのか」にあまり目を向けていないようにも見えます。AIの力をフルに発揮するためには、やはり、単なるAIOpsで留まらず、その先も活用されていかなければいけないと考えています。ですので、エクストリーム ネットワークスはAIOpsの先を見越した投資を行っています。
「すべての企業はAIのユースケースを3段階で考えるべき」
――“AIOpsの先”とは、どのような活用法を考えているのですか。
ブカリ ネットワーク業界に限らず、すべての企業はAIのユースケースを3段階で考えるべきです。
最初は、AIを使うことで仕事を「強化」する段階です。記者が記事を書くときにもAIを利用しますよね。我々の業界なら、トラブルシューティングの際の原因究明にAIを使います。ネットワーク構成時に設定を自動化するのにも役立てられるでしょう。AIを使ってより良い状態で仕事ができるようにすることに、企業はまずフォーカスすべきです。
第2段階は「リプレース(置き換え)」です。手作業で行ってきた多くの作業がAIに取って代わられていきます。
そして、最も大切なのが第3段階です。AIによって収益性を高めたり、ビジネス機会を増やす、つまり何かを「創造」することです。第1段階だけにフォーカスしていてはAIの競争に負けてしまうというのがエクストリームの考えです。そこで、3つのフェーズすべてでAIを駆使することを信念として掲げています。
――ネットワークソリューションのベンダーとして、具体的にどんなことができますか。
ブカリ 第1段階は、主に自動化です。トラブルシューティングやネットワーク構成、あるいは異常検出を自動化します。ネットワークの世界ではすでにデプロイメントから管理・分析まであらゆる機能が自動化されてきており、AI技術はそれらを強化することができます。
データセンターからキャンパスまで、そして有線・無線、SD-WANまで統合的に管理する我々のクラウドプラットフォーム「ExtremeCloud」でも、AIアシストによるアナリティクスやオーケストレーション、トラブルシューティング、セキュリティを提供しています。
第2段階の具体例はデジタルツインです。物理ネットワークをサイバー空間で再現し、そこで構成変更やアップグレードの効果を確認したり問題点を検出したりすれば、物理的な作業やテストは不要になります。規模の大きな企業なら、数百万ドルを節約することも可能でしょう。
セキュリティ運用に関しても、有効な使い方があります。一般的に、企業は複数ベンダーが提供するセキュリティ製品を用いており、各製品のポリシーをマッチングするのに苦労しています。エクストリームは、その作業をすべてAIに任せてしまえる「Universal ZTNA」という機能をクラウドで提供しています。これも、AIによる置き換えの一例です。