NFCで変わる「おサイフケータイ」市場――街のクリーニング屋へも普及へ

非接触ICカードの国際標準規格NFCへの移行により、「おサイフケータイ」が変わろうとしている。そうしたなか、エリクソンはASPでNFCのプラットフォームを提供することで、サービスコストのさらなる低減を実現しようとしている。

日本の携帯電話の特徴的な機能である「おサイフケータイ」――その世界仕様への対応がいよいよ始まった。

先陣を切ったのがKDDIだ。1月に発売したサムスン製スマートフォン「GALAXY SⅡWiMAX」で非接触ICカードの国際標準規格NFCに対応する「モバイルNFCサービス」をスタートさせた。NTTドコモとソフトバンクモバイルも年内にNFCに対応する端末を投入する計画だ。

NFC(Near Field Communication)は、本来は13.56MHzの周波数を使う非接触ICカードの国際規格の名称で、これには、ソニーが開発したFeliCa、オランダのフィリップスが開発したTypeA(Mifare)、米モトローラが開発したTypeBの3規格が包含されている。

業界団体のNFCフォーラムでは、これらすべてに対応できるグローバル仕様の策定が行われているが、すでに海外ではTypeAとTypeBの2規格を実装するシステムの導入が進んでおり、NFCという言葉は、もっぱらこの「TypeA/B」規格を指すものとして使われるようになっている。

事実上TypeA/Bが世界標準のNFCとなり、FeliCaは日本のローカル規格として取り残されようとしているのである。KDDIのGALAXY SⅡWiMAXに搭載された「NFC」もTypeA/Bに対応するものだ(以下、本稿でもNFCをTypeA/Bの意味で用いる)。

他方、ドコモはFeliCaとNFCの双方に対応するスマートフォンを新たに開発する計画を明らかにしている。

国際規格化でコストが大幅ダウン

日本では2001年にJR東日本が導入したSuicaを筆頭にFeliCaが広く普及している。これに対してNFCが商用化されたのはここ1~2年のことで、本格普及はこれからだ。

では、なぜ携帯キャリアは屋上屋を重ねる形となるNFCの導入を進めるのか――。

スウェーデンに本社を置く大手通信機ベンダー、エリクソンの日本法人でNFC関連ソリューションを担当するビジネスデベロップメント本部長の木下直樹氏は、その最大の理由としてコスト面での期待感を挙げる。

鉄道やバスなどの交通機関で広く採用されているFeliCaだが、導入企業のすそ野はそれほど広がっていない。「おサイフケータイのサービス提供企業数は30社程度」(木下氏)というのが現状だ。

その大きな要因は、FeliCaが主に国内市場で展開されてきたため、カードの単価やシステム構築コストが高止まりしていることだ。

木下氏は、昨年エリクソンに入社するまでソフトバンクモバイルで「おサイフケータイ」事業の責任者を務めていた。その当時「FeliCaのコストではとても採算が取れないと、導入を見送った会社がかなりあった」という。NFCの導入はこうした状況を打開する突破口となる可能性があるのだ。

「世界市場で多くのプレイヤーが競うことでNFCのチップセットや機器の価格が大きく下がることが期待される。さらに、システムを共通化することで、NFCを導入した日本企業がそのサービスを世界市場で展開できる可能性も出てくる。携帯電話によるNFCサービスの提供企業数は3000社程度まで広がるのではないか」と木下氏は期待をかける。

月刊テレコミュニケーション2012年4月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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