――冬商戦は、NTTドコモ向けの「AQUOS PHONE SH-01D」が週間の販売ランキングで1位になるなど好調でした。
大畠 昨年の夏モデルまでは、スペックや操作性で弊社の製品は海外メーカーに差をつけられていたことは否めず、お客様も最先端のスペックを搭載したグローバル端末を好まれていました。しかし、冬モデルでは、弊社も海外メーカーと遜色ないところまでキャッチアップしています。国内メーカー他社より約半年早くAndroidスマートフォンを市場投入し、ノウハウを蓄積してきました。それが冬モデルに反映されてよい製品に仕上がったのではないかと自負しています。
――日本のユーザーは、ワンセグやおサイフケータイなど国内独自仕様に対するニーズが高いことも好調につながっているのではありませんか。
大畠 スマートフォンを購入されるお客様の層は、昨夏の時点ではマーケティング用語でいうアーリーアダプターが大半を占めていましたが、現在はアーリーマジョリティへと移行しています。この層は、フィーチャーフォン時代に当社の“全部入り”ハイエンドモデルを支持してくださっていたお客様と重なっています。
冬モデルに投入する製品は大画面、高精細、防水仕様、光学手ブレ補正付き高画素カメラ、薄型と我々の得意分野が満載で、アーリーマジョリティのニーズとマッチしていることが売れ行きにつながっているのではないでしょうか。
省エネ機能をさらに進化
――3キャリア向けに「AQUOS PHONE」ブランドでスマートフォンを展開していますが、他社製品とはどのような点で差別化するのですか。
大畠 スマートフォンが出始めた頃は海外勢との間に差があり、そこに追いつくことに一生懸命でした。ようやくキャッチアップできたので、これからは、当社のもともとの強みである液晶を含む先進デバイスを中心に他社より「半歩先を行く」戦略を考えています。
その1つが、AQUOS PHONEとAQUOS(テレビ)、AQUOSブルーレイによる「AQUOS連携」です。
スマートフォンで撮影した画像を直感的な操作で大画面テレビに映し出したり、ブルーレイで録画した番組をスマートフォンで視聴することがすでに昨年からできるようになっています。冬モデルではさらに進化し、ブルーレイで録画した番組に加え、テレビのリアルタイム放送を防水仕様のスマートフォンで入浴時に楽しむことも可能です。
――AV連携といえば、今年1月に開催された家電見本市「CES(Consumer Electronics Show)」でスマートTVが話題を集めていました。スマートフォンとテレビの両方を手がける家電メーカーにとって新たな可能性が広がるのではありませんか。
大畠 何をもってスマートTVと言うのかによりますが、AQUOS連携については、いっそう使い勝手を向上させ、さまざまな利用シーンの中で便利な機能を準備していきます。昨年を第1ステップとすると今年は第2ステップであり、よりシームレスに連携する方向に進化していきます。
――フィーチャーフォンからスマートフォンに移行したユーザーの間では、「電池の持ちが悪い」「すぐにフリーズする」といった不満の声も多く聞かれるようです。AV連携といった“攻め”だけでなく、こうした“守り”に対する取り組みはどうなっていますか。
大畠 AQUOS連携や高機能カメラなどはあくまでも付加価値であり、お客様にストレスなく使っていただくことが最も重要です。弊社もそこを一番に追求しています。
スマートフォンは画面がより大きく鮮明になり、なおかつサクサクつながるようになっていますが、それだけ電池の消耗が早くなっています。
当社がその対応として独自に冬モデルから搭載している「エコ技」機能は、高画質を維持しながらバックライトを制御し、ディスプレイ消灯時には複数のアプリがバックグラウンドで起動する際の電力を抑制する省エネ機能です。この「エコ技」機能で電池の不安を解消させました。これからも液晶のコントロール技術などを駆使して、さらに省エネ化を進めていきたいと考えています。
操作性も、昨年の夏モデルと比べて冬モデルは一段と向上していますが、今年の夏モデルではさらによくなるはずです。
――Androidは頻繁にバージョンアップが行われるので、その対応に苦労しているのではありませんか。
大畠 それはあると思います。しかし当社の場合、過去に「ザウルス」などのPDA端末やウィルコム向けのWindows Mobile端末を手がけてきたことで蓄積されたノウハウが、スマートフォンで役立っています。
ザウルスは当初、独自OSを搭載していたのですが、その後、リナックスを採用しました。リナックスになれば課題はすべて解決すると考えていましたが、実際にはアプリケーションを軽快に動作させるのに非常に苦労しました。Androidはご存知のようにリナックスベースであり、ザウルス時代に悪戦苦闘した技術者が核となってAndroidスマートフォンの開発に携わっています。
また、フィーチャーフォンは通信事業者ごとにプラットフォームやOSが異なるため、キャリア別の組織体制になっていました。これに対し、スマートフォンではプラットフォームが共通化するので、昨年秋に「グローバル商品開発センター」を立ち上げ、ベースの部分はそこで作っています。別々の組織にいた人員を1つにまとめたことで、非常にパワフルな組織が出来上がっています。