総務省でユニバーサルサービスの見直しが進んでいる。NTTは、従来の固定電話による屋内(固定地点)のみを保障するユニバーサルサービスから、モバイルを軸として屋外(居住エリア)まで含めたユニバーサルサービスへの転換を主張する。同社は2024年5月8日、モバイルを軸とした場合のユニバーサルサービスの必要コスト試算に関する説明会を開催した。
NTT 経営企画部門 統括部長 城所征可氏
4月23日に行われた総務省 ユニバーサルサービスワーキンググループでコスト試算結果を公表したが、構成員から試算の前提条件や算出根拠に関する疑問の声が多く聞かれた(参考記事:NTTがユニバ会合で試算結果公表「モバイルも対象にすることで事業者コストは大幅削減」|BUSINESS NETWORK)。このため後日、必要コスト試算に関わる補足資料を総務省に提出した。説明会は、これを受けて行われたものだ。
モバイルを軸として屋外(居住エリア)まで含めたユニバーサルサービスへの転換を主張する
NTTは、メタルが縮退する2035年以降の固定電話について、ユーザー数を500万と想定。①NTT東西が光回線電話を全国提供した場合、②「ワイヤレス固定電話(NTT東西の提供するモバイル網を活用した電話サービス) or 光回線電話」および「ワイヤレス固定方式(homeでんわ等、MNOの提供する0ABJ番号を利用可能な電話サービス)をともに保障する場合、③「ワイヤレス固定方式 or 光回線電話」いずれかを保障する場合、④「ワイヤレス固定方式」を保障する場合の4パターンに分けて収支を試算した。
4つのパターンに分けて必要コストを試算
現状、光回線はNTT東西の提供エリア、CATVや電力系など他の事業者の提供エリア、NTT東西および他の事業者の両方が提供しているエリアを含めると、全国99.7%が整備済みだ。①現在のメタル電話を光回線電話に代替する場合、0.3%の未整備エリアと他事業者のみの提供エリアをNTT東西が新規で整備する必要があり、その赤字額は年間450億円になる。また、NTT東西が提供済みのエリアでも同320億円の赤字が発生する。
光回線電話の収入ではコストをまかなえないという
この合わせて770億円という赤字額について、NTT 経営企画部門 統括部長の城所征可氏は「月額1700円の住宅用光回線電話の収入ではコストをまかなうことが難しいから」と説明した。