降水量1ミリ未満の日が日本一多い「晴れの国おかやま」――。温暖で住みやすい気候に恵まれた岡山県は、気象災害や地震の発生も少ない。東日本大震災後にデータセンターの建設が増えるなど、その土地柄に対する認識も広まっている。
だからと言って危機管理の重要性が低くなるわけではない。2011年9月、西日本の広い地域に被害をもたらした台風12号は岡山県も直撃。9月2日から4日にかけて同県に上陸した。
災害対策本部では連日、本庁の幹部をはじめとするメンバーが対策を協議。県内各所の県民局並びに地域事務所等から報告される被害状況等を受けて、本部長からの指示を各県民局・地域事務所に伝達するなどして人命保護と被害拡大の防止に努めた。
そこで大きな役割を果たしたのが、本庁と県内の出先機関を結ぶテレビ会議システムだった。
県政の“要”で活用
岡山県ではおよそ10年前からテレビ会議を使っており、2011年春、新システムへと更新した。新たに導入されたのは日立製作所の「Wooolive」だ。県内の全27市町村をつなぐ光ファイバー網「岡山情報ハイウェイ」をベースに、本庁内の危機管理センターと、備前・備中・美作の3つの県民局、6つの地域事務所の計10拠点を接続。7月1日から稼動した。
図表 岡山情報ハイウェイとテレビ会議システム「Wooolive」設置施設 |
テレビ会議の用途は主に2つある。1つは、災害対策本部が設置された場合など、危機管理体制におけるコミュニケーションインフラとして活用することだ。映像・音声によるコミュニケーションと資料データ共有を駆使し、県内各所からの情報を素早く対策本部で把握し、また、決定した対策・指示を本部から各県民局・地域事務所へと正確かつ迅速に伝達する。
新システムの稼働から2カ月後、期せずして実際の災害対策本部会議に活用されることになったWooolive。導入選定にも携わった岡山県県民生活部・情報政策課長の小林徹氏は「映像と音声の遅延もなく、問題なく使えた。安定性に優れたシステムだと証明された」と話す。本庁にいながら県内各所の被害状況を正確に把握でき、また指示伝達も円滑に行えた点が大きく評価されている。
もう1つ、知事をはじめとする本庁幹部と県民局のトップが重要施策を話し合う月一回の政策推進会議もテレビ会議で行われている。県政における最高意思決定機関とも言える会議であり、幹部と担当課員の移動時間を排除し、意思決定の迅速化に貢献している。