前編では無線LANがオフィスにおけるメインインフラの役割を担い始めていることを見た。では、無線LANベンダーは、この無線LANのプライマリ回線化、さらには企業ネットワークの無線化という大きな変化にどう対応しようとしているのか。
まず、無線LANの本格導入の前提条件となる、2つの技術面の進歩を軸に最近の動きを見てみよう。今まさに劇的な変化を見せているのが高速・大容量化だ。
数年前まで、無線LANの通信速度はIEEE802.11a/gの54Mbpsが最速だったが、2010年に入ってベンダー各社による802.11n対応機器の展開が本格化、一気に300Mbpsに高速化された。
11nの300Mbpsという通信速度は、(1)11a/gの伝送方式の改良、(2)帯域幅を2倍の40MHzに拡大、(3)2×2MIMOを実装、同一周波数に2本の伝送路を設定(2空間ストリーム:STA)することで実現されるものだ。MIMOの実装は通信の安定化にも貢献する。
2011年に入ると3×3MIMOの導入で(3STA)、450Mbpsに対応する製品がコンシューマーモデルを中心に数多く投入された。企業向けソリューションでもこの年アルバが「AP-134/AP-135」を投入するなど、3STA対応製品の導入が始まった。
アルバネットワークスの450Mbps対応アクセスポイント「AP-134/AP-135」 |
シスコも450Mbps対応の新製品「Aironet 3600」のパートナー出荷を日本でも開始しており、「2012年の早い時期」(若澤氏)に販売が開始される見込みだ。
シスコシステムズが2012年上半期の日本発売を計画している450Mbps対応アクセスポイント「Aironet 3600」。4×4のアンテナ構成とすることで受信性能を向上させている |
メルーでも「2012年の第1四半期に新製品を投入する」(中西氏)計画と、2012年前半には450Mbps製品が出揃う。
メルー・ネットワークスが他社に先駆け2008年に投入した300Mbps対応アクセスポイント「AP300」。2012年の第1四半期に450Mbps対応の新製品の投入が計画されている |
デバイス側では、ノートPCのほとんどの機種と、スマートフォン/タブレット端末の一部がすでに300Mbpsに対応している。450Mbps対応製品については、まだノートPCのハイエンド機の一部に留まっている。
11n規格は、最大で4STAによる600Mbpsに対応するが、2012年にも後継規格となる802.11ac対応製品の登場が見込まれることなどから、製品化は不透明だ。
新規格11acでは、当初の最大通信速度900Mbps程度となるが、2014年頃には帯域幅を160MHzに拡大、4STAを採用することで3.5Gbpsに対応する製品の登場が期待されている(規格上の最大通信速度は7Gbpsとなる見込み)。この時点で無線LANは、ギガビットイーサネットと肩を並べる(図表3)。CADデータの伝送やHDテレビ会議も無線LANで使えるようになることが期待される。
図表3 無線LANの高速化 |