“新3K”を実現する建設DX ICTベンダーは現場目線での技術開発を

自動化/遠隔技術など、「建設2024年問題」の解決に資するソリューションが続々登場しているが、普及が進んでいるとは言い難い。「ゼネコンによる旗振り」と「現場目線での技術開発」が今後のカギを握る。

2024年4月に施行される「働き方改革関連法」。その対応に頭を悩ませているのは、物流業界だけではない。「影響は物流業界以上」との声も聞こえるのが、建設業界の「2024年問題」だ。建設業界でも、ついに5年間の猶予期間が終わり、時間外労働の上限規制の強化などが行われる。

建設業界では、以前から職人の高齢化や後継者不足が深刻化していた。「きつい」「汚い」「危険」の3K職場の代表格に挙げられるなか、国土交通省の調査によると、2022年の建設業就業者数は492万人で、ピーク時(1997年)の685万人から約28%減少している。こうした人手不足が影響し、2025年に開催予定の大阪・関西万博のパビリオン(展示館)や催事場の建設工事が入札不成立になるケースも散見される。

加えて、高度経済成長期に整備された道路や橋梁などのインフラの老朽化も進んでおり、2018年度から2048年度までの30年間にかかるインフラ維持管理・更新費は、最大195兆円にまでかさむと国土交通省は試算する。人手不足が原因で、拡大する建設需要に対応しきれないという未来が現実味を帯びてきているのだ。

こうしたなかで迎えるのが「建設2024年問題」であり、ICT技術を活用した「建設テック」への期待が否応なく高まっている。

建設テック市場の現在地

デロイト トーマツ ミック経済研究所は2023年1月、調査レポート「ConTech(建設テック)ソリューション市場展望 2022年度版」を刊行している。

「文書作成・管理」「施工管理」「写真・図面管理」「建設業向けERP」「マッチングサービス」の5分野のソリューション市場について分析した同レポートによれば、5分野を合計した2021年度の総市場は前年度比25.5%増の218億円、2022年度は同26.0%増の274億円(見込値)だった(図表1)。

図表1 建設テックソリューション市場

図表1 建設テックソリューション市場

文書作成・管理市場は、前年度比10.7%増の62億円。現場の安全管理に必要な「労務安全書類(グリーンファイル)」を自動で生成・管理するソリューションが伸長している。

施工管理市場の成長も著しく、前年度比33.5%増の32億円。施工計画や原価管理などの施工関連情報の一元化に関するニーズが高いという。

写真・図面管理市場は、前年度比26.7%増の76億円だった。建設現場の写真・台帳整理や情報共有に活用されているとのこと。

建設業向けERPとは、建設事業者が抱える「ヒト・モノ・カネ・情報」を一括で管理するシステムで、市場規模は前年度比12.9%増の31億円と堅調だ。

工事会社と職人、あるいは機材と施工主を結びつけるCon-Techマッチングサービスも大きく伸びており、市場規模は前年度比65.3%増の15億円だった。

一方、建機やドローンなどとICT技術を組み合わせた建設テックは「黎明期で、市場規模はまだまだ小さい」。調査レポート「2022年版 建設テック市場(施工現場編)~施工現場における自動化・省力化技術の実態と展望~」などを発行する矢野経済研究所生活・環境・サービス産業ユニット 生活産業グループ 主任研究員の横山秀彰氏はこう説明したうえで、「だが、建設業界が抱える課題解決に資する技術として、こうしたハードウェア関連市場の伸長が期待される」と話す。

矢野経済研究所 生活・環境・サービス産業ユニット 生活産業グループ 主任研究員 横山秀彰氏

矢野経済研究所 生活・環境・サービス産業ユニット 生活産業グループ 主任研究員 横山秀彰氏

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