ローカル5Gラボの草創期
ローカル5Gラボの開設は2020年冬から始まった。ローカル5Gシステムメーカー(NEC・富士通・日立国際電気)や通信事業者(NTT東日本・オプテージ・IIJ)が、自社の拠点がある東京都内や神奈川、大阪などの大都市圏にラボを開設した。また、コニカミノルタがユーザーの立場で自社(高槻サイト)内に、「ローカル5Gとキャリアによる5Gネットワークを併用」するユニークな5Gラボ環境を整備、社外への開放をいち早く進めた。
コニカミノルタのデモスペース。超低遅延画像伝送システムに5Gを適用することで、画像IoT市場拡大を狙う
2021年には、SIerや自治体、ユーザー企業といった幅広い事業者によるローカル5Gの免許取得が相次ぎ、ラボ開設がさらに加速した。前年までは、大都市圏に構えるケースが目立ったが、地方へと広がってゆく。1月には日本無線が長野市に、6月には近畿地方の自治体として初めて免許を取得した兵庫県が地域産業力の強化に向けて、県立工業技術センター内に「ローカル5Gスマート工場(ファクトリー)<体験施設>」を開設した。関東では、前年11月に、東京都立産業技術研究センターが、それまであったロボット・IoT向けの検証環境に、ミリ波(のちにSub6も)を活用したローカル5Gラボを立ち上げ、DX推進センターとして整備した。
兵庫県立工業技術センターは、スマート工場を想定したデモ環境/ラボを整備。開設からこれまでに1000回を超えるデモを実施した
愛媛県では、県産業技術研究所が、愛媛CATVのローカル5Gインフラを活用して、「久米窪田5Gラボ」を開設、いくつもの実証を積み重ねている。
同年12月には、新潟県上越市に本社を置く丸互が、北陸新幹線・上越妙高駅前に、テレワーク環境も併せ持ったローカル5Gラボを、コンソーシアム形式で県内外の企業とともに立ち上げた。現在は、さらに地域の企業を巻き込み、新潟県内・北陸地域でのローカル5G活用に取り組んでいる。
新潟県の丸互は、ローカル5Gを設置したコワーキング/サテライトオフィス「LOCAL 5G LABJM-DAWN」を開設
最近も増え続けるラボ
2022年も東京・神奈川でラボ開設が目立ち、都心部には、ローカル5Gシステム大手のノキアがパートナーに向けてラボを、また、マルチベンダー展開を進める伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)や三井情報がラボを開設し、ローカル5G商戦の本格化に向けた環境を整えた。東京とその周辺にあるローカル5Gラボの多くが、2022年までに整備された。
CTCは、検証環境の整備に注力。機材の持ち込みも可能で、ラボ内に3カ所のシールドルームを持つ
また、前年に続き地方でのラボ開設も相次ぐ。2月にサイレックス・テクノロジーが京都本社内に、6月には富士通が自社・那須工場内に屋外検証環境を、12月にはQTnetが九州産業大学のキャンパスを使用して、屋内外での研究フィールドを整備、産学連携により多くの実証・研究を進めている。
QTnetは九州産業大学と共同でローカル5G活用に取り組む。複数の基地局を設置し、広大なキャンパス全体をカバー
さらに、ローカル5Gを活用し、新たなビジネス創出の場として、ラボを活用とする動きも活発化。旭化成ネットワークスは、地域社会に向けてローカル5G環境を提供する「CoCo-CAFENOBEOKA」を開設。また、名古屋では、CATV会社のスターキャット・ケーブルネットワークが、ビジネスインキュベーション施設内にローカル5Gラボを設けて、地域の企業等での活用を進めている。
旭化成ネットワークスでは、地域社会を含めた共創の場として、延岡市内にPoC環境をもったラボを開設
NTT西日本も同様の取り組みを進める。本社内に開設した「QUINTBRIDGE」では、テクノロジー活用したビジネスの創出を目指すが、そのテクノロジーの1つにローカル5Gが位置づけられ、基地局の整備を図った。
2023年に入ってからも、NTTコミュニケーションズや三技協、電気興業でラボの開設が相次いでいる。2023年秋には、キャリア向け5Gシステムでも実績をもつエリクソン・ジャパンが仙台市内に、ローカル5G専用のオープンラボを開設する。