ICTの世界において今、最も大きな潮流といえば、クラウドとスマートデバイスの2つだが、最近モバイルデバイスによるクラウドの活用を表す「モバイルクラウド」という言葉もよく耳にするようになってきた。
「世界の人口は約70億人だが、モバイルデバイスの加入数はすでに50億を超え、さらにどんどん成長している。かたやデスクトップPCの台数は約10億台で今後は横ばい。どちらのマーケットに注力すべきかは歴然だ。通常のクラウド市場の成長率はおよそ40%なのに対し、モバイルクラウドについては200%以上の伸び率で拡大すると予測されている」
モバイルクラウドの可能性について、このように語るのは、デロイト トーマツ コンサルティングの八子知礼氏だ。企業はモバイルクラウドをビジネスにどう活かしていけばいいのか。2011年11月25日に開催された「MCPCモバイルソリューションフェア2011」での八子氏の講演から、そのヒントを探してみよう。
今後、爆発的に普及するのは7~8インチのタブレット
まず企業でのクラウド活用の現状について八子氏は「今年大きなティッピングポイントを迎えたと思っている」と話した。変化をもたらしたのは、言うまでもなく今年3月に発生した東日本大震災である。震災以前、クラウドはコスト削減やビジネスのスピード向上、新規事業のスモールスタートなどの視点で捉えられることが多かった。しかし震災後は、BCPやテレワーク/モバイルワークといったニーズも加わり、「必須の検討事項」(八子氏)へと変化しているという。
また、八子氏はクラウドの大きな特徴の1つとして、企業内に閉じておらず、アクセスする場所やデバイスを問わない点を指摘。そして、スマートデバイスを活用したモバイルワークと従来の働き方には「圧倒的な断絶がある」としたうえで、「スマートデバイスではデスクを必要としない。歩きながら仕事が完結するモバイルワーク2.0、クラウドワークの時代になっている」と説明した。
モバイルクラウドで、デスクワークからモバイルワーク2.0(クラウドワーク)へ |
ちなみに八子氏が「今後、爆発的に普及する」と予言したのは7~8インチのタブレット。iPadのような10インチのタブレットについては「実際に使っている方は分かると思うが、キーボードのあるデバイスに戻る人もいる。10インチ前後のタブレットについてはPCの代替にはあまりなり得ないのでは」と語った。
今後爆発的に普及するのは7~8インチのタブレットと八子氏は予測 |
また、社員が勝手に業務でSaaSを使う「勝手SaaS」や個人所有のデバイスを業務に使う「BYOD(Bring Your Own Device)」などの動きについては「サービスとデバイスは“民主化”の時代。完全に禁止という環境はもうあり得ないと思う。私のサービス、私のデバイスを企業の中でも使いたいというトレンドは止められない」とした。