ローカル5Gシステムを導入・活用するための製品/サービスの選択肢はこの数年で飛躍的に増えた。導入規模や用途に応じて適したものを使い分けられるようになった反面、選び方に悩む企業も増えたことだろう。
ケースごとに選び方は当然異なるが、どの企業も共通して留意すべき点がある。“隠れコスト”だ。検証・PoC段階では見えにくい隠れコストも含めて比較することが、商用段階のシステム選定の大事なポイントとなる。
コストと性能は、基本的にトレードオフの関係にある。ローカル5Gの目的が、Wi-Fiではできないユースケースを実現することにある以上、Wi-Fiとの価格差は仕方ない。いかにコストを最適化できるかが鍵を握るが、目先の安さばかりに気を取られて隠れコストを見落とすと、かえって高コストになるリスクがあるのだ。
そうした陥穽に落ちないためのポイントを整理していこう。
基地局は一体型が主流に
まず基地局については、製品価格だけでなく、構築・運用費用に直結する設定のしやすさに目を向けたい。
最近は構築時の設定作業を効率化するため、基地局をネットワークにつなぐと自動的に設定作業を行うゼロタッチインストール機能等の実装が進んでいる。また、設定・変更時のインターフェースがCLIなのかGUIなのかも作業負荷に直結する。
加えて、構築・運用時の隠れコスト低減に効くのが「一体型基地局」だ。従来は分散配置・運用が一般的だったRU(無線部)と、それを制御するCU/DU(制御部)の機能を1筐体に集約したものだ。
装置数が減ればシステム構成がシンプルになるのでSI費が抑えられ、かつ管理ポイントが経るので運用コスト低減にも効く。当初は分散型の基地局から始め、その後に一体型「AirSpeed 1900」を市場投入したエアースパン・ジャパン 代表取締役のスティーブン・シップリー氏は、ローカル5Gの経験がないSIerが分散型基地局の構築・運用に苦労したことを明かす。「問題がソフトウェアにあるのかハードウェアなのか、切り分けも大変。この難しさでは市場が伸びないと判断し、まず企業が簡単に使える一体型に集中することを決めた」
とはいえ、多数のRUをCU/DUから集中制御する分散型も、大規模環境ではメリットが出る。検証・PoC段階から商用時の使い方、無線エリア・端末数等を具体的にイメージし、ベンダーと共有しておくことで適正な基地局選びが可能になる。