「日本の5Gはカバレッジが突出している。人口カバレッジ96.6%(2023年6月時点)はグローバル平均の2倍。これはローバンドの5G化によって達成されたものだ。数字だけ見ると順調だが、3年ごとに倍増するトラフィックの伸びについていかないと、今後はネットワークの品質維持・向上は難しくなる」
こう語ったのは、エリクソン・ジャパン 代表取締役社長の野崎哲氏だ。同社は2023年11月20日に都内で、プライベートイベント「エリクソン・フォーラム2023」を開催。同氏は、これまで通信事業者の5Gインフラ整備は「カバレッジ中心だったが、特に大都市ではmassive MIMOを使ってキャパシティを強化することが重要になる」と話した。
エリクソン・ジャパン 代表取締役社長の野崎哲氏
ローバンドとは1GHz以下のいわゆるプラチナバンドと呼ばれる帯域のこと。つながりやすさに優れ、LTEで主力の周波数として使われてきた。国内の通信事業者は5Gのカバレッジを広げるためにこの帯域を5Gに転用してきたが、帯域幅はそれほど大きくないためキャパシティ、つまりネットワーク容量は4G時代と比べてもほとんど変わらない状況だ。
一方、5Gが普及するに連れて、モバイルトラフィックは確実に増える。2020年から2030年までに10倍にも膨らむと予想されているモバイルトラフィックをさばくには、キャパシティの強化が必須になる。それには、より広い帯域幅が使えるミッドバンド(6GHz以下。Sub6帯と呼ばれる)の活用がキーとなる。また、従来と比べて圧倒的に多くのアンテナ数を使って広帯域化するmassive MIMOの活用も有効だ。