国立情報学研究所(NII)とNTT、NTT東日本、富士通の4者は2023年10月30日、光1波長あたり1.2Tbpsでの伝送では世界最長となる伝送環境を構築し、フルスループット(伝送環境で送受信可能な最大データ量)での伝送と、1組の汎用1ソケットサーバを用いた世界最大速度の1Tbps超データ転送に成功したと発表した。
本実験は、NTT東日本の敷設済み商用光ファイバーと、NTTが開発したデジタル信号処理技術およびデバイス、富士通製の次世代光伝送システム「1FINITY Ultra Optical System」、およびNIIが開発したファイル転送プロトコル「MMCFTP」(Massively Multi-Connection File Transfer Protocol)を用いて実施した。4者は2023年10月に、東京都と神奈川県の間に光1波長あたり1.2Tbpsの伝送が可能な光伝送ネットワーク環境を構築し、次の2種類の実験を行った。
実証実験ネットワークの構成
実験1では、東京都千代田区を起点として神奈川県横浜市で光ファイバを折り返すネットワークを構成。光1波長あたり1.2Tbpsの伝送が可能であることを確認した(上図表)。1.2Tbps信号のフルスループットは実験用テスターで確認。光1波長あたり1.2Tbpsの光信号を、敷設済みの商用光ファイバを用いて336km伝送できたことは、世界初という。
実験2では、1.2Tbps伝送環境下にて、1組の汎用1ソケットサーバを用いてNIIが開発したMMCFTPによるデータ転送を実施した(下図表)。
データ転送実験の構成
実験の結果、1034Gbpsのデータ転送速度で約47TByteの大容量データを転送完了させることに成功。1034Gbpsのデータ転送速度では一般的な25GByteのブルーレイディスク1枚を約0.2秒で転送できる。47TByteの大容量データはブルーレイディスク1880枚分に相当し、約376秒で転送することができる。
今後の取り組みについては、NIIは世界最高性能のネットワーク基盤SINETの整備により全国の日本の研究教育の発展を支えており、今後も超高速・大容量性と低遅延性の両特長を追求していく予定。また、データ流通を効率的に行うために、MMCFTPをSINET利用者に幅広く提供し、その実用性を高めていくという。
NTTは、本成果を活用した大容量光伝送システムの開発により、圧倒的な低消費電力、大容量、低遅延伝送を可能とするIOWN APNの更なる高度化を目指す。NTT東日本は、大容量光伝送システムを用いた高速大容量通信サービスの実現を目指し、検討を進める。また、富士通は、本効果を基に、光伝送システムの大容量化や低消費電力化を実現する技術開発を継続。顧客やパートナとともに、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。