SPECIAL TOPIC小セルの技術をローカル5Gに活かす 一体型gNBで簡便さと低価格を実現

モバイル基地局ベンダーの米エアースパンが、ローカル5Gビジネスに力を入れている。市場開拓の鍵を握るのがSub6対応のオールインワン基地局装置(gNB)。導入・運用の簡便さと大手メーカーの製品を使ったソリューションの1/2~1/3という低価格が魅力だ。

急伸するプライベート市場 売上の3分の1が「企業向け」に

従来、エアースパンのビジネスは100%がこうした通信事業者向けであったが、ここに来て状況が変わってきている。

「5Gへの移行を前に通信事業者の設備投資が伸び悩むなか、プライベートネットワークの需要が盛り上がってきており、直近では売上の1/3が企業向けとなっています」とシップリー氏は明かす。

4G/5Gシステムを使って上空の航空機にWi-Fiサービスのバックボーンを提供する「エア・ツー・グラウンド」を含めると、売上の2/3が通信事業者向け以外のビジネスだという。

エアースパンは、日本でも4年ほど前からプライベートネットワークに取り組み、自治体やCATV事業者が展開するLTE仕様の地域BWAで実績をあげてきた。その延長で今ローカル5Gビジネスに注力しているのである。

一体型5G基地局で導入のハードルを引き下げる

エアースパンがローカル5G製品の主力として展開しているのが、Sub6対応のオールインワン基地局装置だ。

5Gの基地局装置(gNB)は、RU(無線ユニット)、DU(分配ユニット)、CU(集中ユニット)の3つのコンポーネントで構成される。

SA構成の5G網では、基地局サイトにアンテナとRUとDUの機能の一部を実装した装置を置き、離れた場所に配置されたサーバー上にCUと残されたDUの機能を実装して、多数の基地局サイトを一括制御する「Split Option 7-2x」(O-RAN仕様)などの分散型の基地局構成が主流になると見られている。これにより多数の小セル基地局を効率的に展開できるのである。

とはいえ、2~3台からせいぜい5台ほどの基地局で使われるローカル5Gでは、こうした構成は決して効率的ではない。ローカル5Gの構築を手掛けるSIerにはモバイルネットワーク構築の経験がない企業も少なくなく、「構成が複雑で、障害時の切り分けが難しい」などの声が寄せられていたという。

エアースパンでは日本のローカル5G用帯域(n79)にも対応する分散型の基地局装置「AirVelocity 2700」を2021年に投入していたが、「この難しさでは市場は伸びないと判断、1年半くらい前に戦略を変更し、まず一体型に集中して、企業ができるだけ簡単に使えるものを出そうと考えた」(シップリー氏)という。

こうした経緯で開発され、日本で最も多く売れているのが、筐体にRU、DU、CUの機能を実装した屋外設置型のオールインワン基地局「AirSpeed 1900」(2T2R、送信出力:2W×2)だ。屋内設置型の「AirVelocity 1901」(2T2R、n79での送信出力250mW)も販売している。

Sub6屋外型 オールインワン gNB(2T2R)「AirSpeed1900」

Sub6屋外型 オールインワン gNB(2T2R)「AirSpeed1900」

屋内型Sub6 オールインワンgNB 「AirVelocity 1901」

屋内型Sub6 オールインワンgNB 「AirVelocity 1901」

「Air Strand 2200」、Sub6 屋外型オールインワンgNB(2x 2T2R、ケーブルモデム搭載)

「Air Strand 2200」、Sub6 屋外型オールインワンgNB(2x 2T2R、ケーブルモデム搭載)

2024年には、次世代基地局用チップを導入して4T4Rを実現、出力を10W~15Wに向上させた屋外設置型オールインワン基地局「AirSpeed 2920」も投入される。「AirSpeed 1900で4kmだったセル半径が、AirSpeed 2920では15kmに拡大する」(シップリー氏)とのことだ。

小セル前提のビジネスモデルで安価な値付けを可能に

もう1つ、エアースパンのオールインワン基地局の大きな魅力となっているのが、「大手ベンダー製品を使った基地局ソリューションの1/2~1/3」(シップリー氏)という安価な価格設定だ。

主力のマクロ基地局のビジネスを前提に、小セル基地局を展開する大手ベンダーに対し、エアースパンは量産によるコスト低減を見越し、安価な値付けを行っている。特にプライベートネットワーク向けの製品では、エアースパンは製品の開発・製造を担い、ソリューション展開の主要な部分をパートナーに委ねていることも、低価格化に寄与している。

安価な値付けを前面に打ち出している新興ベンダーもあるが、長年の通信事業者とのビジネスで培ってきたキャリアグレードの品質が大きな強みだ。米国のメーカーであるため輸入規制の対象となる懸念がほとんどないことも、企業がエアースパンのソリューションを選択する理由の1つとなっている。

シップリー氏は日本の状況について「ケーブル事業者各社が地域BWAを5Gにグレードアップするタイミングを計っていて、2025年に更新されるのではないかと言われています。おそらくこれが次の大きなマーケットになるのではないか」と語る。さらに、この頃にはキャリアのSA網への投資も本格化すると予想、「小セル基地局のマーケットが爆発的に広がる」と期待をかける。

<お問い合わせ先>
エアースパン・ジャパン株式会社
URL:https://www.airspanjapan.com/

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