「これから5年間の変化は、過去25年の変化よりも大きいものになるだろう。この変化に対応するには、規模の大小にかかわらず、すべての企業でクラウド戦略が必要になる」。米本社CEOとCTOの来日に合わせて2011年10月11日に開かれたブロケード コミュニケーションズ システムズの記者会見で、マイケル・クレイコーCEOはこう話した。
クレイコーCEOの指摘する変化とは例えば次のようなものだ。2018年までに86%のサーバーワークロードは仮想化環境に移行し、また2010年に1.2ZBだったデータ量は2020年には35ZBへと増大する。さらにインターネットに接続するデバイスの数も2020年までに220億と爆発的に増えると予想されているが、現在のネットワークは当然こうした状況を見込んでは構築されていない。「つまり、今までとは違うやり方をしないといけないということだ」(クレイコーCEO)。
「業界のゲームチェンジャーになる」
では、企業はこうした変化にどう対応すればいいのか。ブロケードがそのための統合アーキテクチャとして打ち出しているのが「CLOUDPLEX」である。米本社CTO兼コーポレート・ディベロップメント担当バイスプレジデントのデイブ・スティーブンス氏は、ファブリック、グローバル、オープンの3つのキーワードでCLOUDPLEXのコンセプトを説明した。
米ブロケード コミュニケーションズ システムズ CTO兼コーポレート・ディベロップメント担当バイスプレジデント デイブ・スティーブンス氏 |
まずファブリックとは、仮想データセンター向けの新しいネットワークトポロジーのことである。同社のVCS技術により、従来の階層型の構成ではないフラットなレイヤ2ネットワークが可能になる。サーバー仮想化で現在大きな課題となっているのは、ネットワークの運用・設定変更に関する部分であるが、「オペレーションフリー。コンフィギュレーションフリーのネットワークが実現する」のがファブリックのメリットだという。なお、このファブリック技術はブロケードがSANで培ったものをイーサネットの世界に持ち込んだものだ。ブロケードはSAN市場においてワールドワイドで70%、日本では85%以上のシェアを持つという。
2番目のグローバルは、データセンター間における仮想マシンの移動に関する課題を意味している。「距離をマスキングし、遅延やパケットロスを防ぐ仕組みが必要になる」(スティーブンス氏)。ブロケードでは、3000km離れたデータセンター間での仮想マシンの移動デモを行うなど、この問題に徹底的に取り組んでいるという。
そして最後のオープンは、オープンスタンダードのことである。スティーブンス氏は「最高の機能ということを考えたときには、それぞれの機能を各社から取り入れるほうが優れている」としたうえで、「会社としてオープンスタンダードに強くコミットしていく」と力説。その具体策の1つとして「OpenFlow Solutions Lab」を2012年2月に日本で開設することを明らかにした。
国内データセンターネットワークインフラ市場におけるブロケードのポジション。シスコに僅差の2位につけている |
前述のようにSAN市場で圧倒的なシェアを持つブロケードであるが、そうした強みを背景にデータセンターネットワークインフラ市場全体での存在感も日に日に増している。IDC Japanの調査によれば、イーサネットスイッチ、レイヤ4-7スイッチ、WAN高速化装置、ファイバーチャネルスイッチからなる国内データセンターネットワークインフラ市場でのブロケードのポジションは、シスコに次ぐ2位だ。しかも、その差は僅か。日本法人の青葉雅和代表取締役社長は会見の最後に「業界のゲームチェンジャーとして位置づけられるよう、これからも頑張っていく」とアピールした。