EMCが通信キャリア向け事業を加速――ハイブリッド化見据えクラウドを支援

クラウドサービス事業者向け製品を拡充するEMC。中でも、通信キャリアへのソリューション提供を事業戦略の要と位置付ける。ハイブリッドクラウドの実現を見据え、キャリアの新事業を全面支援する。

分散DBが解約率低下に貢献

蓄積された多種多様なデータを分析し、活用することもキャリアにとって従来からの課題だ。これに対しては、データ分析とバッチ処理を分散データベースによって実現する情報分析基盤「Greenplum(グリーンプラム)」を昨年から提供開始した。

Greenplum DBは、大量の構造化されたデータの分析を安価で高速処理できる点が特長だ。「通信キャリアのような規模になれば、並行クエリ実行に加えて、並列データロードが非常に重要な要素になる。Greenplum DBは、これが可能な唯一のソリューション」と笠原氏は話す。

海外では、米T-Mobileが自社ユーザーの活動分析にGreenplum DBを利用。解約パターンの分析や基地局の設置計画などで高い効果を挙げている。国内キャリアも高い関心を寄せているという。

また、非構造化データ(DBに収まらないデータ)の活用については、オープンソースの分散処理フレームワーク「Hadoop」をEMCがエンタープライズ向けに機能強化した「Greenplum HD」の提供を始めた。企業の商用環境でも耐え得るレベルまで可用性、信頼性を向上させることで、通信キャリアもオープン系の先進技術を取り入れられるようにした。

例えば、Twitter等で発信されたネガティブなクチコミ情報と解約率との因果関係を分析して対策を講じたり、あるいはサービス開発やターゲット顧客の絞り込みを行うなど、非構造化データをより広範囲に活用することが可能になるという。

サービス基盤のサイロ化を解消
2つ目の課題であるITインフラの効率化については、サービスごとにサイロ化された従来のシステムを、共通化されたIT基盤へと移行し全体最適化を目指すことが解決策となる。そこで求められるのが、大規模仮想環境を実現するソリューションだ。

通信キャリア向けとなれば、やはり焦点となるのが信頼性である。この点で、ハイエンド向け製品だけでなくミッドレンジのストレージ製品でも大規模仮想環境に耐え得る信頼性を実現している点が評価されているという。また、VMwareをはじめとするEMCグループで、ITインフラ全体の最適化を提案できる点も大きな強みだ。社会インフラとして求められる信頼性と効率化を両立するIT基盤を構築するためのトータルな提案とサポートを行う。

そのなかでも現在ニーズが高まっているのが、複数のデータセンター(DC)をまたがった仮想環境の構築だ。この課題に対して、場所の離れたDCのリソースを共通プール化するストレージ仮想化製品「VPLEX」を提供している。

「EMCはクラウドをやらない」

最後のクラウドサービスの収益化について笠原氏は「他のメーカーとは違って、EMCは自身でクラウドサービス事業を手掛けていない。だからこそ、徹底して通信事業者のパートナーとして動くことができる」と強調する。「海外のキャリアがクラウド事業のパートナーとしてEMCを選んでいる理由の1つがそこにある」という。

企業のクラウド利用は端緒についたばかりで、市場は徐々に拡大しているものの、例えばIaaSの大規模ユーザーはゲームやSNS等のサービス事業者が中心になっているのが現状だ。そうした国内のクラウド市場を拡大していくために、EMCは次のような道筋を描く。エンタープライズ市場へパブリッククラウドサービスを浸透させるとともに、クラウド事業者のDCにプライベートクラウドを引き込み、そのうえでハイブリッドクラウドを実現していくというものだ。そこで、「DCとネットワークをトータルに提供でき、かつ企業からの信頼も厚い通信事業者の強みを生かさない手はない」と笠原氏は話す。

この実現に向けてEMCは、技術面だけでなく、ビジネスの側面でも通信キャリアをサポートするための取り組みを始めている。

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