写真:Aleksandr Durnov / iStock
高信頼低遅延通信(URLLC)や端末の省エネ化、測位機能など、5GはIoTをサポートする機能を実装してきた。組み合わせによって新たな産業ユースケースを実現するのが狙いだ。
URLLCは遠隔制御や自動化に、省エネ化はデバイスの運行時間を長くするのに役立つ。測位技術はクルマ向け通信のV2Xにも用いられ、より精緻な制御を実現する。エリクソン・ジャパン CTOの鹿島毅氏は「5G標準化ではこれら要素技術を、V2XやUAV(ドローン)等の対象物ごとの分類に当てはめて要件や使い方を議論している」と話す。
エリクソン・ジャパン CTO 鹿島毅氏
5Gの標準化は、2022年に完了したRelease17(Rel-17)で一区切りがつき、現在は「5G-Advanced」の議論がRel-18で始まっている。そこでは、動くIoTを支えるためのどんな機能が追加されるのか。
基地局を瞬時に切り替え
Rel-17までで規定された機能は5G-Advancedでも引き続き強化される。例えば、測位精度はRel-18で数cmレベルまで向上させる予定だ。
一方、Rel-18で新たに議論される機能もある。ノキアが提案している機能として、日本法人CTOの柳橋達也氏が挙げるのが次の2つだ。
ノキアソリューションズ&ネットワークス CTO 柳橋達也氏
1つが、アップリンク(上り通信)MIMOの強化である。車両やUAV等に搭載したカメラ映像を活用する機会が増えると予想され、「上り通信が重要になるため、(現在の2×2から)4×4MIMOにして強化する」。100MHz幅のTDDで最大500Mbpsのスループットと、数Gbpsのセル容量を実現する方向性で、容量増加により、分散MIMOを効率的に利用できるという。
もう1つが、ハンドオーバーのシームレス化(図表1)だ。高速移動する車両やUAV、列車等では、基地局が切り替わる際の「瞬断でもクリティカルな問題になる場合がある」。切替先で待ち受け準備をすることでこれを解消する(図表1の①)。
また、現在はレイヤー3で行うハンドオーバー処理を、信号量が少ないレイヤー1/2で行うことで高速化するアプローチもある(同③)。
4Gと5G、あるいは5Gの複数周波数帯を束ねて高速通信するCA(キャリアアグリゲーション)やDC(デュアルコネクティビティ)を使いやすくする技術も検討する。2つめのリンクを確立するまでの時間を短縮し、高速移動中でも瞬時に2 以上のリンクを使えるようにする(同②)。