<特集>動くIoT世界共通の5.9GHz帯を「次世代ITS」に割当で何が可能に?

自動運転の基盤となるV2X通信の実用化に通信キャリアが力を入れている。自動車メーカーなどと共同で新帯域5.9GHz帯の実証実験を実施、モバイルネットワークとの連携の可能性を探る。

ITS(高度道路交通システム)用の新周波数帯5.9GHz帯の割当に向けた検討が、総務省が今年2月に設置した「自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会」(以下、研究会)で進められている。

5.9GHz帯は、米国や欧州、中国で割当・実用化が始まっているITSの国際バンドだ。日本ではITSに760MHz帯など独自の帯域が利用されているが、世界共通帯域の5.9GHz帯が利用できるようになれば、コネクテッドカーの世界展開にも弾みが付くと見られる。

もう1つ、5.9GHz帯の割当で期待されているのが、高度な自動運転の実現である。

自動運転は、車両に搭載したカメラやセンサーを利用した「自律型」から、車車間(V2V)通信、路車間(V2I)通信などのV2X通信やモバイルネットワークを経由するV2N通信で道路情報・交通情報などを共有する「協調型」に移行していくと見られている。

将来的には、これらのV2X通信で車両管制を行う高度な自動運転の実現が期待されている。

2014年から自動運転の検討を行ってきた内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、2022年3月に取りまとめられた「SIP協調型自動運転通信方式ロードマップ」では、こうした高度な自動運転の実現に向けて、「2030年頃から20MHz幅以上の帯域を利用する新たな通信方式が必要になる」と指摘されている。5.9GHz帯はその受け皿となる。

なお、V2X(Vehicle to Everything)という言葉は、一般的にはV2N(Vehicle to Network)通信を含む概念として用いられるが、研究会ではV2X通信を「専用帯域を用いた車両との直接通信」と定義、ネットワークを経由するV2N通信と切り分けて検討を行っている(図表1)。本稿でもV2X通信をこの意味で用いる。

図表1 自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会での「V2X通信」と「V2N通信」の定義

図表1 自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会での「V2X通信」と「V2N通信」の定義

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