KDDIは2023年5月11日、2023年3月期の決算会見を行った。連結売上高は前年度比4.1%増の5兆6718億円、営業利益は前年度比1.4%増の1兆757億円となり過去最高益を更新した。燃料高騰や通信障害の影響は363億円のマイナスを生んだが、3G停波などによるコスト効率化やDX、金融などの注力事業によって吸収した形だ。
KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏
通信ARPUを今年度上期に反転
一方、マルチブランド通信ARPU収入は853億円のマイナス。au、UQ mobile、povoすべてのブランドを対象にしたID数は前年度の3097万IDから3123万IDに増加したものの、通信ARPUは前年度の4200円から3960円に減少した。これは、UQ mobileの構成比率が上昇したことと、au使い放題プラン契約が増加したことが影響している。
KDDI 2023年3月期連結営業利益の増減要因
ただし、通信ARPU収入の前年同期比の減収幅は着実に減少しており、2022年3月期第4四半期に308億円だったものが2023年3月期第4四半期には143億円に縮小した。KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏は「2024年3月期上期中の反転を目指す」と明言し、データ需要の高まりを受けたauの魅力化とデータ利用の促進を行うことにより、これを実現する考えを示した。
通信ARPU収入
既存通信以外の注力領域は、通信とのシナジーにより競争優位性を発揮した。その1つであるDX領域(ビジネスセグメント)の売上高はコーポレートDXが1000億円規模、ビジネスDXが1500億円規模、事業基盤サービスが1500億円規模となり、前年度比で17.6%の伸びとなった。特に、高付加価値のコネクティビティデータセンター事業が好調であり、国内と海外を合わせたデータセンターの売上高が1000億円を超え、営業利益率は2割以上に上った。
また、同じく注力領域の金融事業も、auとのシナジーを背景にauフィナンシャルグループ(au FG)の営業利益と顧客基盤が拡大。決済・金融取扱高は14.3兆円(前年同期比22.9%増)、au PAYカード会員数は860万人(前年同期比100万人増)に上り、auブランドの信用をベースとした経済圏が広がっていることを示した。
高橋氏は、このような通信を中心に様々な領域での成長を目指す「サテライトグロース戦略」を、データドリブンによって加速させていく考えを述べた。通信事業で蓄積されるファーストパーティーデータをマーケティングに活用し、個人向けにはau経済圏の拡大、法人向けにはデータを活用したDXビジネスの拡大に取り組んでいくという。