最も生産性が上がる働き方は、「オフィスのみ」でも「在宅勤務のみ」でもなく「場所を選択できる」こと──。
WeWork Japanが、主にオフィス内で勤務する1400名を対象に実施した調査(2022年10月発表)では、出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが定着しつつある現状が明らかになった。最も生産性が上がる働き方について、46.8%が「オフィスと自宅を選択」と回答。他の選択肢を大きく上回った。
経営層や人事・総務の考えも変化している。従業員1000人以上の企業では、働く場所を従業員の裁量に「すべて任せてよい」が26.7%、「半分程度任せてよい」が46.3%。1000人未満の企業でもこの合計が過半数を占める。従業員の裁量を認めず「会社が決める」は、1000人以上の企業では1割に留まる。
1日7万人が仮想オフィスへ出社
働きやすい環境の整備は従業員満足度や生産性、優秀な人材の確保など、様々な面で企業の成長力を左右する。働く場所の自由度を確保しつつ、“集う場”であるオフィスの機能を最適化する戦略が求められよう。
この場をサイバー空間に求める企業が増えてきている。「仮想オフィス」「メタバースオフィス」などと呼ばれる空間だ。
これを提供する1社がoViceだ。トヨタ自動車、パナソニック、リコー、旭化成等の大手企業を含め2300社超が採用し、合計で1日に約7万人がoViceの仮想空間に“出社”している。
メタバースで想起される3D空間でこそないが、アバターで表示される同僚らの存在を感じつつ業務を行い、アバターを近づければ自然に会話できる。ビデオ通話も可能だ。一定距離に近づくまでは声が聞こえず、アバターの向きによって聞こえる範囲が変わるなど、現実空間を再現するための様々な工夫が凝らされている。
仮想オフィス/メタバースオフィスの「oVice」。オフィスを模擬した仮想空間に社員が出社することで、互いの状況をゆるやかに可視化し、音声・ビデオ通話も行える。ビデオ通話画面の一番左が同社PRマネージャーの薬袋友花里氏
現実のオフィスと同様、会話中のアバターに近づいて話を聞いたり、参加するのも自由。会議室に入れば密談も可能だ。「あの3人が話してる。近くで聞いておこう」「困ったな。〇〇さんが会議室から出てきたから相談してみよう」といった、空間を共有しているからこそのコミュニケーションを作るのが狙いだ。
リアルなオフィスを持たず、約100名がリモートで働くoViceに約2年勤務するPRマネージャーの薬袋友花里氏は、ユーザーの現状をこう話す。「大企業が多く、十数名でスモールスタートしながら100人程度まで広がるケースが増えてきている。もともと社内で会話しながら仕事していた文化があり、それにマッチすると言われる」
社員のオフィス回帰が始まっても在宅勤務は一定程度残り、それが新たな分断を生んでいるという指摘がある。出社組と在宅組との情報格差だ。「予定表と実際の状況は違う。相談したい上司が早めに会議を終えていれば話したいといった、ちょっとしたやり取りにハードルを感じる企業が、それを解消するために利用している」