より大容量化をめざすSD規格のロードマップ
図2にSD規格のロードマップを示す。図には示していないが、SDAが発足した2000年当時のSDカードの最大容量は、8または16MBであったが、現在のSDXCカードの最大容量は64または128GBで、この10年間で容量が8000倍に向上した。SDカードに搭載しているNANDフラッシュメモリの微細化による大容量化、多値化(ひとつのメモリセルに複数ビットを記憶する技術)によるビットコストの低下、さらにメモリチップ8~16枚を積層し、パッケージに封止する高密度実装技術のような半導体メモリ技術の技術革新が容量の向上、価格低減に大きく貢献している。SDXCカードの規格上の最大容量は2TBで、その実現までにはまだ当分かかる見込みである。
図2 SD規格のロードマップ [クリックで拡大] |
また、SDカード規格ではスピードクラス規格が定義されている。デジタルビデオカメラや放送録画ではコマ落ちがないように一定の書き込み速度で、連続してSDカードに書き込む必要がある。スピードクラス規格はSDカードの最低書き込み速度を示す規格である。現在、スピードクラスにはクラス2(C2)、クラス4(C4)、クラス6(C6)、およびクラス10(C10)が定義され、SDカードにスピードクラスを示すマークが印刷されている。通常、デジタルビデオカメラの高精細(HD画質)録画ではクラス4(C4)が必要である。
最大312MB/sまでSDバスが高速化
図3に次世代SDカード規格の概要を示す。上記で述べたように2TBまでの大容量化の他に、SDバスの高速化がある。バージョン2.00までの従来のSDバスは、25メガバイト/秒(MB/s)が最大転送速度であったが、バージョン3.00の新しいバージョンでは、UHS-Iという高速SDバス規格で最大104MB/sとなり、4倍のバス性能を実現した。一部の最新のデジタルスチルカメラやノートPCでは、このUHS-I SDバスの採用が始まっている。
図3 次世代SDカード規格(Ver.3.0X/4.00) [クリックで拡大] |
なお、SDバスの性能とSDカードのリード/ライトが異なることにご注意願いたい。通常、SDカードのリード/ライト性能は、フラッシュメモリのリード/ライトの性能に制約されるため、SDバスの性能より遅くなる。104MB/sのSDバスを採用したものでは、リードが95MB/s、ライトが80MB/sのカードが発売されている。SDカードのリード/ライト性能の高速化は、SDカードに搭載されているコントローラの技術の進歩に拠るところが大きい。通常、高速SDカードは複数のフラッシュメモリチップを同時にリード/ライトすることで高速化を実現している。SDバスの高速化により、SDカードへのリード/ライト性能が向上し、デジタルスチルカメラの連写性能の向上や地デジなど高精細放送の複数チャネルを同時に録画する応用が期待できる。
最新規格のバージョン4.00では、さらなるSDバスの高速化を実現した。これはUHS-IIという高速SDバス規格で、最大312MB/sに高速化している。このUHS-II SDバス規格は、従来のSDバス(4ビットパラレルバス)とは異なり、USB 3.0やSSD (Solid State Drive)で採用されている高速シリアルバスを採用した。従来のSDバス信号ピンの下(2列目)に、高速シリアルバス用の信号ピンを追加する。
SDカードの規格化の重要なコンセプトは、新たなSDバスを規格化する際に、従来のホスト機器で動作できるように下位互換性を維持することである。高速SDカードを従来のホスト機器で使用する場合、低速でもいいが、互換性があり、動作することが重要である。