総務省の「通信利用動向調査(令和3年調査分)」によれば、ビジネスにクラウドを活用する企業は年々増加しており、2021年時点では7割以上の企業が利用している(図表1)。
図表1 国内のクラウドサービスの利用状況
また、セキュリティベンダーのパロアルトネットワークスが調査したところでは、国内企業はクラウドサービス事業者(CSP)が提供するIaaSサービスを平均で2つ利用している。AWSやAzureなど複数のCSPを利用している企業の数も59%だった。複数のクラウドを用途に応じて使い分けるといった考え方が主流になってきたと言えよう。
そうは言っても、今までオンプレミスのデータセンター(DC)にあった資産をすべてクラウドに移行するという考えは多くの企業にとって、非現実的だ。また機密情報などはクラウドではなく自社の設備に留めておきたいと考える企業も少なくない。つまり、企業はマルチクラウド活用を進める一方で、今までのオンプレミス拠点も管理しなくてはならない状況だ。
複雑化するネットワーク
こうした状況をネットワーク視点でとらえると、各拠点、DC、マルチクラウド同士を相互接続する必要があり、非常に複雑化していると言えるだろう。さらに、クラウド内部では各リージョンも接続しなければならず、現状はいくつもの課題がある(図表2)。
図表2 クラウド利用環境及び課題
1つはポイント間の接続性。既存の拠点やシステム、そしてマルチクラウドをいかに安全に接続するかが課題となっている。
ネットワークのパフォーマンス確保も課題だ。多くの企業WANは、あらゆる通信を1度本社/DCに経由し、ファイアウォールなどのセキュリティ対策を適用してから目的地にアクセスする構成が大半となっている。しかし、クラウドにアクセスするたびに本社/DCを経由する形は遠回りなうえ、トラフィックが増え続けている昨今ではルーターやセキュリティ装置などへの負荷が高まり、遅延が生じやすい。
管理性も問題だ。複数のプラットフォームをまたいでの運用管理が必要となり、そのオペレーションも自ずと複雑化する。複数のコンソールも必要になり、エンジニアの学習コストも高まる。またこれらの結果として、どうしても機敏性や環境全体を俯瞰した可視性に課題が生じる。