SPECIAL TOPICデータセンターのための新たな節電法とは? DPUで電力使用量45%削減の試算結果

IT機器は電気がなければただの「箱」だ。エネルギー価格の値上がりを背景に電力価格の高騰が続く中、データセンター事業者は省電力化に向け知恵を絞っているが、決め手に欠ける状況だ。その打開策となりそうなのが、DPUを用いた処理のオフロードである。

エネルギー価格の値上がりや為替変動を背景に電力価格の高騰が続き、日々の家計への打撃もさることながら、ビジネスに対する影響も深刻化している。

中でも、社会のインフラとなりつつあるITシステムにとって「電気」は必要不可欠であり、その価格高騰は運用コストにダイレクトに跳ね返ってくる。個々の企業や組織単位でさえそうなのだから、多数のサーバーやネットワーク機器を集約して運用するデータセンターとなればなおさらで、収益構造を揺るがしかねない深刻な課題だ。

しかもこれは、さまざまなクラウドサービス利用者にとっても無縁の話ではない。たとえば、普段は場所を意識することなく利用しているクラウドサービスも、実体は世界各地に存在するデータセンターにある。現時点ではデータセンターの運用コストが十分に低いため廉価に利用できているが、もしその価格構造が変化すれば、今のような料金体系で享受し続けるのは難しくなるだろう。

高騰する電力コスト、もはや「ムーアの法則」には期待できない時代へ

データセンターのランニングコストにおいて大きな比重を占めているのが、土地代と電気代だ。「特に、ランニングコストとして大きなファクターになっているのが電気代と空調です。電気を大量に消費すれば機器の発熱も増え、空調コストもかかります。つまり二重にコストがかさんでしまいます」と、エヌビディアのエンタプライズ マーケティング部 マーケティング マネージャ、愛甲浩史氏は指摘する。このままいけば、データセンターの電力使用量は、2030年には世界の電力需要の3%から13%を占めるに至るとの予測もあるほどだ。

左からエヌビディア エンタプライズ マーケティング部 マーケティング マネージャ 愛甲浩史氏、
ソリューションアーキテクチャ&エンジニアリング部 シニアソリューションアーキテクト 大西宏之氏

しかも、比較的広大な敷地を確保できる海外とは異なり、日本国内のデータセンターの場合、限られたスペースにいかに多くの機器を集約できるかが収益に直結してくる。高まるニーズに応えてどんどん性能を高めていけば、比例して電力消費も増加し、廃熱も増えて空調コストもかさみ、全体としてデータセンター事業者の利益を圧迫する構造だ。そんな中でもサービスを提供するため、各事業者は、空冷・水冷の採用などさまざまな工夫を重ね、省電力化に取り組んできた。

その一方で、AI活用、データ分析やクラウドを生かしたDXなどが相まって、コンピューティングリソースに対する需要はますます高まる一方だ。

データセンターの電力使用は加速度的に増加し、2030年には世界の電力需要の13%を占めるとの予測もある

データセンターの電力使用は加速度的に増加し、2030年には世界の電力需要の13%を占めるとの予測もある(画像クリックで拡大)

こうした状況でデータセンター事業者が取り得る選択肢は2つあるだろう。1つは、利用者へのコスト転嫁、つまり「値上げ」だが、簡単に理解は得られないはずだ。となると、何とかして機器の電力効率を高め、これまでと同じ電力消費でより多くの性能を提供していくしかない。

これが十年前ならば、半導体の集積率は一年半から二年で二倍になるとする「ムーアの法則」に基づいて、同じ面積、同じ消費電力で倍の性能を持つ新たな半導体が登場することに期待し、様子を見るという選択肢もあったかもしれない。しかし近年、微細化技術が限界を迎えるなどの要因で進化はストップしており、その意味で「ムーアの法則は限界を迎えた」とも言われている。

「この先、今までと同じ感覚でサービスに必要な機材をそろえていくと、今まで以上に電気を消費してしまうことになり、事業として成り立たなくなる可能性があります」(愛甲氏)

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