――昨年の秋、クラウド事業へ本格参入しました。クラウドにはNTTグループの各社がそれぞれ取り組んでいますが、御社の「NTTPC CLOUD」はその中で、どのような特徴を出していくのでしょうか。
井上 コンセプトは、「すべての会社にクラウドを。」というものです。クラウドと一口に言っても、高機能を求める企業から、より手軽に利用できるものを選ぶ企業まで、さまざまなニーズがあります。特に中堅中小企業に対して、もっと手軽に導入できるクラウド環境を提案することを目指しています。
――具体的に、どのようなサービスを提供していくのですか。
井上 第一弾としてまず、パブリッククラウドサービス「Web ARENA CLOUD9」の提供を始めました。
米Verio社が開発と運用保守を担当する先進的なクラウドプラットフォームを使った仮想サーバーサービスです。NTTPCがこれまでホスティングサービスで培ったノウハウを活かし、仮想OSや日本語対応コントロールパネルの開発、運用サポートを含めて国内のお客様向けに販売します。
これに続いて、今後もネットワーク、Webホスティング、メールホスティング、セキュリティ等、複数の機能やサービスをまとめて簡単に導入できるパッケージ型クラウドサービスを展開していきます。
中堅中小にも届くクラウド
――クラウドサービスは企業の関心が高い反面、競争も激化しています。どのように差別化を図っていくのでしょうか。
井上 従業員数百人程度以下の中堅中小企業の大半が、オンプレミス型で社内サーバーを持っています。そうした企業が今、セキュリティ対策やスパムメール対策といった運用負荷の増大に苦しみ、これを解決するために、クラウド型のメールサービスやGoogle Appsのようなサービスへの移行を検討し始めています。
しかし、その移行は簡単ではありません。誰もがスムーズに、従来の社内ICT環境を、例えばGoogle Appsに移行できるでしょうか。
サービスの選定も、移行の方法も、移行後の保守の形態も、工夫次第で大きく変わります。高いICTスキルを持った人材がいる企業はまだしも、大半の中堅中小企業にとっては、まだまだクラウドを活用するのは難しいものです。「もっと小回りの効く、簡単なものはないのか」。それが中堅中小企業の本音ではないでしょうか。
NTTPCは、データセンターもネットワークもSaaSも、そして導入前の設計・構築、導入後の保守サポートもすべて提供することができます。これらを中堅中小向けにパッケージ化し、従来の社内環境を安心して我々にお預けいただく。そうしたサービスを検討していきます。
――クラウド導入の敷居を下げることで、付加価値を提供しようということですね。
井上 それこそ、中堅中小企業向けのキーポイントになるでしょう。
パッケージ型クラウドサービスの1つとして、4月から、NTT東日本との協業により「クラウド型セキュアカメラソリューション」の販売を始めます。これは、複数拠点のネットワークカメラからの映像をデータセンター内のサーバーで記録・管理する当社のサービスと、NTT東日本の「フレッツ・VPNワイド」を組み合わせたものです。
店舗や駐車場などに監視カメラを設置する作業を簡略化するために、設定済みの接続・中継機器等を収納したボックスも用意します。さらにNTTPCが、オンラインでのサービス監視・管理、異常検出時の故障対応なども行います。監視カメラシステムを導入したいお客様の課題にワンストップで応えられます。
――一般的にイメージされる「クラウドサービス」とは、ずいぶんと形が異なります。
井上 このような複合的なサービスによって、複数の店舗を展開する事業者に向けて付加価値の高いサービスが提供できます。今後も、こうした業種特化型のサービスを次々と出していきます。“芸の細かさ”を、NTTPC CLOUDの売りにしたいですね。