O-RAN準拠の検証環境を提供 東工大・東大とBeyond 5G研究へ
商用展開でこの壁を乗り越えた経験から、同氏は「組み合わせのパターンが多く、様々な測定機やシミュレータが必要になる。我々がベンダーに要求を伝えて検証用の設備を開発してもらったが、これから取り組む方々にとって、ハードルは高い」と話す。そこで、「我々の検証環境とノウハウを研究機関等へ公開する」ことで、仮想化Open RANのメリットをより多くの人が享受できるようにするために始めたのが、「オープンイノベーションラボプログラム」だ。
このプログラムは、O-RANが掲げるRANの仮想化・オープン化を実現するために必要なインテグレーションの支援を主目的とする。楽天モバイルの仮想化Open RANの検証環境とインテグレーションのノウハウを国内外の通信事業者や企業、学術機関に提供することで、5G製品・アプリの開発を後押しする。さらに、RIC(RAN Intelligent Controller)によるネットワークの自律制御や衛星を使った超カバレッジ、超低遅延や超低消費電力を実現するための技術研究を加速させ、Beyond 5Gの研究開発にも貢献していく考えだ。
取り組みはすでに開始しており、東京工業大学と東京大学の構内に、楽天モバイルのラボと接続した仮想化OpenRANの技術検証環境を構築。東工大とは仮想RANに加えて、エッジコンピューティングを活用した超低遅延アプリの開発・検証を実施し、東大とは低軌道衛星を利用したIoT超カバレージに関する共同研究を進めている。
仮想化Open RANの特徴を活かして、「大学構内の検証環境を速やかに構築できる」(同氏)のが本プログラムの特徴だ。東工大には楽天モバイルが検証済みのRUと仮想DU/CU、コア機能の一部を提供。東大のケースでは、楽天のラボから距離的に近いことからRUのみを構内に設置し、楽天ラボ内の仮想DU/CUと接続してスピーディに低軌道衛星向け検証環境構築した。東大では、ローカル5Gの検証に利用することも検討中で、その場合は、楽天ラボ内にローカル5G用のコアを用意することで迅速に対応することが可能だ。5G端末・アプリを開発する企業も、本プログラムを活用すれば迅速に検証環境が用意できる。
日本版のO-RAN認証施設を設立へ 商用化見据えたノウハウ提供も
もう1つ、横須賀市内の情報通信技術の研究拠点である横須賀リサーチパーク(YRP)において、日本におけるOTIC(Open Testing and Integration Centres)の立ち上げに向けて、楽天モバイルとして検証環境の構築などに取組んでいる。OTICでは、O-RAN ALLIANCEが定める仕様に準拠する製品の認証や対応機器間の相互接続性を検証し、インテグレーションを支援する。RU/DU/CU、5Gコア、端末のシミュレータを活用して様々な試験が可能だ。例えば、仮想化環境で動作するコアシミュレータを用いて、開発したDU/CUと複数種のコアの相互接続性を検証したり、UE(端末)シミュレータも併用して仮想DU/CUのストレステストを行うことも可能だ(図表2参照)。「実際のコアや端末を使う場合よりも容易に様々な試験が行える」(同氏)。
図表2 仮想化Open RAN検証環境の構成例
こうした設備・環境の提供に加えて、楽天モバイルが培ったノウハウも、本プログラムに参加するパートナーにとって魅力となろう。5Gアプリの用途によってRU/DU/CUやコア機能の最適な配置・組み合わせは変わるが、「実用性を考慮した最適な構成を提案できる」。例えば東工大との超低遅延アプリ検証においても、RU/DU/CUと全てのコア機能を大学構内に構築したが、「商用展開の際に、多くのリージョナルデータセンターに全てのコア機能まで展開するのは現実的でない。実用性を考慮した低遅延を実現するために、東工大に最低限配置すべきRU/DU/CUとコア機能の一部、その他を楽天モバイルのラボに柔軟に配置できるようにしている」という。実際に仮想化Open RANを商用展開してきた経験から、“単なる検証”に留まらない、ビジネスの成功まで見据えた支援が期待できるのも、本プログラムの魅力と言えよう。
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