垂直測位サービス「Pinnacle」による高さ把握の例。東京タワーのどこにいるかが把握できる
「GPSを使っていてお困りになるシーンすべてが対象になる」
垂直測位サービス「Pinnacle」の商用サービスを開始したMetComは11月9日、オープニングセレモニーを東京タワーで開催。併せて行われた記者説明会で、MetCom 取締役 CFOの荒木勤氏は、同社の測位サービスをこう紹介した。
商用サービスがスタートしたのは10月31日だが、この日に開業式を行ったのには理由がある。11月9日は「119番の日」。MetComのサービスは、119番等の緊急通報にも貢献できるサービスだからだ。
実際、MetComが採用する米NextNav社の測位方式は、全米4400都市で緊急呼に垂直位置情報を提供するため使われている。
オープニングセレモニーでのテープカットの様子。MetComの株主各社も参列した。左から、DRONE FUND 共同創業者/代表パートナーの大前創希氏、セコム 常務執行役員の上田理氏、京セラコミュケーションシステム 代表取締役社長の黒瀬善仁氏、MetCom 代表取締役の平澤弘樹氏、NextNav バイスプレジデントのダン・ハイト氏、ソニーネットワークコミュニケーションズ 代表取締役社長の渡辺潤氏、サン電子 代表取締役社長の内海龍輔氏
「消防当局にも実現に向けて提案」
MetComは、2段階で測位サービスを発展させていく計画だ。
今回提供を開始したPinnacleは第1段階にあたり、気圧データをもとに垂直方向を測位するサービスだ。
スマートフォンやIoTデバイスなどに搭載されている気圧センサーで取得した気圧情報をクラウドへ送信。MetComがビル屋上などに設置した高精度気圧計の気圧情報と比較・分析することで、リアルタイムにデバイスの垂直方向の位置が分かるという。なお、気圧データの送信に必要な通信帯域は狭く、SigfoxなどのLPWAでも送れるとのことだ。
Pinnacleのサービス概要
記者会見場が設置されたのは、地上150メートルに位置する東京タワーのメインデッキ。記者がエレベーターでメインデッキへ上る際には、Pinnacleを使って、現在地の高さがリアルタイムに分かるデモも行われた。誤差2~3メートルの精度を実現しているという。
東京タワーのエレベーター内で行われたデモの様子。エレベーターの上昇にあわせ、地上高も上がっていった
Pinnacleで提供されるのは、この垂直方向の測位データという“部品”のみ。この部品を使って、パートナー企業が垂直方向の測位データを用いたサービス/ソリューションを開発し、エンドユーザーへ提供していくスキームになっている。測位データはSDKまたはAPIで提供する。
MetComの垂直測位データとGPSやビーコン等による水平測位データを組み合わせることで、3次元の測位を実現することが可能だ。
3次元測位が必要なシーンの代表例が、前出の緊急通報である。通報者が何階にいるかも通知できれば、より迅速な救命活動が可能になる。実際、「消防当局にも実現に向けて提案している」とMetCom 代表取締役の平澤弘樹氏は明かした。
Pinnacleのサービスエリアは現在、東京・横浜と大阪。来年には関東一円や政令指定都市へ広げていく予定だという。