ローカル5Gの本免許取得事業者は、2022年3月末現在で106者にのぼる。Sub6の4.6~4.9GHz帯に周波数が拡張し、5G NR(New Radio)のみを用いるSA方式によるシステム構築が可能となった2020年12月以降、参入に弾みが付いている。
ただ、ローカル5Gの普及とともに、新たなニーズや制度面での課題も浮き彫りになってきた。そこで総務省「ローカル5G検討作業班」では審議を再開した今年2月以降、6項目について検討を行っている。
教育などにニーズのある広域利用
検討項目の中で最大のテーマが、広域利用だ(図表1)。
図表1 広域利用のイメージ
ローカル5Gは自分の敷地や建物内で利用する「自己土地利用」を前提としており、他者が所有する建物や土地を利用する「他者土地利用」にはいくつかの制約が設けられている。また、自己土地を大きく越えて他者の土地まで電波エリアを広げる、あるいは地域BWAのように自己土地や他者土地の区別なくエリアカバーする「広域利用」は、現行の免許制度では認められていない。
しかし、屋外のユースケースでは、他者土地も含めて広域にローカル5Gを構築したいというニーズが少なくない。
一例が教育だ。「GIGAスクール構想」の一環として、一部の自治体で小学校の建物・敷地および周辺を地域BWAで整備しているが、帯域幅が20MHzしかないため、大勢の児童が一斉にPCやタブレットを利用すると通信速度の低下が避けられない。その解決策としてローカル5Gがあるが、現行制度では学校の建物・敷地内のみしか環境を構築できず、学外ではBWAに切り替えることになるので、高速大容量通信を利用できるのは学校にいる間に限られる。
広域利用で地域全体をエリア化できれば、さらに見守りや防災などまちづくり分野への活用が進むことも期待できるため、作業班は広域利用を制度化する方向で検討を進めている。
広域利用を制度化するうえでポイントとなるのが、自己土地利用制度との兼ね合いだ。
広域利用を認めると、後発で自己土地利用の希望があったとき、自己土地でローカル5Gを利用できないという問題が生じかねない。
作業班では解決策として、①広域利用の開始前にカバーエリア内の全戸にその旨を周知し、一定期間内にローカル5Gの自己土地利用を実施する予定がないことを確認する、②広域利用開始後にカバーエリア内における自己土地利用の希望があった場合、広域利用側は、希望者がローカル5Gを容易に利用できる形でサービス提供する、といった条件案が出されている。
とはいえ、ローカル5Gは自己土地利用を基本としたシステムとして制度化されており、広域利用は例外的な使用形態であることに変わりはない。にもかかわらず、広域利用開始後にカバーエリア内で自己土地利用の希望が出てくる可能性があるなか、いったん認めた広域利用を永続的に認めることには懸念がある。このため、免許の有効期間(最大5年)は広域利用の継続を認め、再免許を希望する際、あらためて広域利用のカバーエリア内に自己土地利用希望者がいないかどうかを確認する方向で議論はまとまりそうだ。最大5年の有効期間を定めることで、ユーザーへのサービス提供の継続性も確保できる。