2015年までに300MHz幅以上、2020年に1500MHz幅以上の周波数を移動通信などの成長分野に新たに割り当てる――。
総務省の「ICTタスクフォース・ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」が昨年11月30日に公表した「WGとりまとめ――ワイヤレスブロードバンド実現に向けた周波数再編アクションプラン」(以下、「再編アクションプラン」)で、こうした意欲的な周波数開放策が打ち出された。
需要拡大が見込まれるワイヤレスブロードバンドや医療、センサーネットワークなどの分野に必要な周波数を確保し、新たな産業の育成を図ることが、その狙い。「再編アクションプラン」では、各分野へ割り当てる周波数帯域やその帯域幅、時期が明確化されている。総務省ではこれを09年に策定された「電波新産業創出戦略の具体化版」(渡辺克也電波政策課長)と位置付ける。
米国では、昨年春にFCC(連邦通信委員会)が議会に提出した「国家ブロードバンド計画」で2015年までに300MHz幅、2020年に500MHz幅をワイヤレスブロードバンドで利用できるようにするという目標を打ち出しているが、「再編アクションプラン」は、その対抗策としての意味も持っている。
移動通信向け周波数は3倍に
この新たな周波数開放策の中心となっているのが、データトラフィックの急増が見込まれている移動通信分野だ。図表に示したように移動通信向けだけで、2015年までに300MHz幅以上の新たな周波数を割り当てる計画となっている。その後も第4世代移動通信システム(4G:IMT-Advanced)向けに1100MHz幅の割当が計画されており、2020年には移動通信向け帯域は現在の約500MHz幅の3倍超に広がる見込みだ。
こうした新たな帯域の割当は移動通信事業者のサービスや事業展開の可能性を大きく広げることになる。
もう1つ移動通信分野で、見逃せないのが、総務省が当初計画していた日本独自の700/900MHz帯の割当プランが見直され、700MHz帯と900MHz帯それぞれに海外のバンドプランと整合した帯域が設定されることになったことだ。
今回割当が打ち出された他の帯域もすべて海外のバンドプランとの整合性が意識されている。日本の携帯電話は、昨年割り当てられた1.5GHz帯を除き、すべて海外と整合する形となるのだ。
図表 新たに確保される移動通信向け周波数帯 |
2Gに独自規格のPDCを導入したことで、長く世界市場から隔絶されてきた日本の携帯電話市場が、バンドプランの共通化、そして3G/LTEの世界市場への本格普及により、ついに海外とシームレス化する。これは、端末市場をはじめモバイルビジネスの世界全般に大きな影響を及ぼすことになる。
今回の周波数再編は、「電波開国」ともいえる状況を生み出すのである。
新周波数の開放は、移動通信市場をどう変えるのか――本連載では、「再編アクションプラン」の市場へのインパクトと帯域獲得に向けた事業者の動きを次回から周波数帯ごとに探っていく。
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