総務省は2022年4月19日、情報通信審議会から「無線LANシステムの高度化利用に係る技術的条件」のうち「6GHz帯無線LANの導入のための技術的条件」について一部答申を受けたと発表した。今後はこの答申をもとに、Wi-Fi 6Eを国内で利用可能にするための省令等の整備が進む予定だ。
「Wi-Fiの歴史における転換点だ」。6GHz帯の開放について、ジュニパーネットワークスでコンサルティングシステムズエンジニアを務める林宏修氏はこのように評価する。
20年以上あるWi-Fiの歴史の中でも、周波数の拡大は数度しか行われていない。1999年に2世代目の規格であるIEEE 802.11a(Wi-Fi 2)で、それまでの2.4GHz帯に加えて5GHz帯100MHz幅を追加。その後、段階的に5GHz帯が拡大されてきた。
長らくWi-Fiは2.4GHz帯及び5GHz帯を使用していたわけだが、まもなく新たに6GHz帯が利用可能になる。
6GHz帯解禁の背景
6GHz帯は現在、固定通信や衛星通信、放送番組の中継などに利用されている。総務省及び情報通信審議会で、これらの既存システムと無線LANの周波数共用を検討したところ、5925~6425MHzの合計500MHz幅において共用可能との結論に至った。
Wi-Fi用の帯域は現在、2.4GHz帯で100MHz幅、5GHz帯は460MHz、合計で560MHz幅だったが、それがおよそ倍になる計算だ。
順調にいけば、6GHz帯を用いるWi-Fi 6Eは、2022年中にも実際に利用できる可能性がある。「答申の公開後、制度を解禁するための省令改正には半年から1年ほどかかる。Wi-Fi 6Eの制度解禁は早ければ秋ごろだ」と無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)会長の北條博史氏は予想。
ネットギアジャパン 代表の杉田哲也氏は「制度解禁後に技適の試験方法などが定められて、そこから認証を受け、製品化に至るにはおよそ1~2カ月必要」と説明する。
6GHz帯の開放は米国等で先行しており、日本も「海外の状況を踏まえて踏み切った」(北條氏)。総務省によれば、近年、テレワークやオンラインの会議や授業等の利用拡大を受け、無線LANの利便性向上が求められていることが背景にあるという。
コロナ禍でNetflixなどのストリーミングサービスや、Zoomなどのビデオ会議が普及したこともあり、世界的にトラフィックが増加。今後はAR/VRの普及などによるトラフィック増加も見込まれている。米国以外では、韓国で6GHz帯が無線LANに解禁されているほか、アジアではオーストラリアとマレーシアがEUでも英・独・仏などが割当済みである。