企業ネットワーク最前線

[特集]もっと光を! - IOWN・光ファイバー・光無線 -

JAMSTECが放つ光無線 海中で1Gbps×100mの超高速通信

文◎原田果林(編集部) 2022.06.13

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

Beyond 5G/6G時代、海中の超カバレッジ拡張は光無線通信が実現する。JAMSTECは昨年、1Gbpsで距離100mの通信を達成。地上並の高速ワイヤレス通信環境が海にも整い始める。

 
電波が使えない海中は、「通信のラストフロンティア」とも呼ばれている。

これまで海中での無線通信は、音波を利用したものが主流だった。しかし音波による通信は水中でも遠くまで届く反面、速度は数kbps~数十kbpsと非常に低速。また、音響ノイズの影響を受けたり、指向性が弱いため様々なところに反響してうまく送受信できないなど、環境に大きく左右されるという欠点もあった。

こうしたなか近年、発達してきたのが光学技術・光検出技術だ。そこでJAMSTC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)は2008年から光を使った海中での高速無線通信の研究開発に取り組んできた。一般的なカメラ用の照明器具などを使う場合、光が届くのは3~5m程度だが、研究を続けるうちにエネルギーを集約したレーザー光を使うとより長距離に届くことが分かってきた。そして昨年11月、トリマティスと行った海中での光無線通信の実証において、距離100m超・1Gbpsの高速通信に成功した。

1Gbps×100m実現への道 実験で使用した送信器にはレーザーダイオードを5個搭載し、5本のレーザービームを同時に出すことで有効経を大きくした。受信器にはPhotomultiplier Tube(フォトマル)を4つ配列する。

「フォトマルとは、簡単にいうと光を電気に変換してくれるもの。『なだれ倍増現象』といって、少しでも光が入ると雪のなだれ現象のようにどんどん広がる仕組みを持っている。これを4つ並べることで受光効率の向上と通信品質の劣化を抑えた」とJAMSTEC 研究プラットフォーム運用開発部門 技術開発部 主任研究員の石橋正二郎氏は話す。

実験に使用した試験機
実験に使用した試験機


海水には塩分やミネラル、目に見えない小さな塵や魚の糞など様々な成分が混ざっているため、遠くに行くほど光が減衰していく。光のエネルギーを絞って細いビームにすれば密度が上がり遠くまで届きやすいが、その代わり懸濁物や遮蔽物にぶつかれば届かなくなってしまう。

一方、光を広げるとどれかは届く可能性があるが、そもそものパワーが弱まってしまう。

「つまり1つの光源に対して1つの受光をするのではなく、マルチビーム・マルチアレイ化することで、『どれかは届くだろう』という形にした」

実海域での試験を行う前にまずは気中で試験を実施した。光を出す/出さないを切り替えることで、オンオフ変調を表現。これを成功させた後、水槽内でも同様の実験を行った。水槽では約20m先に飛ばしたレーザー光を鏡で複数回反射させることで100m以上の通信距離を確保。その状態で1Gbps相当のデータフレームパケットを送受信し、データフレームの品質が保持されていることを確認した。

水槽で行った試験の様子



そして2021年11月、これらの成果を踏まえて実海域・大深度での実証実験を行った。実験にはJAMSTECが持つ探査機「かいこう Mk-IV」を利用。かいこうは2階建ての構造で、ランチャーと呼ばれる2階部分は海上から有線でつながっており、ビークルと呼ばれる1階部分は切り離されて動き回る。

今回はランチャーに送信器を、ビークルに受信器を搭載し、ランチャーが水深約700mに位置した状態でビークルを段階的に水深約800mまで潜らせた(図表)。その結果、実海域でも1Gbps・100m 超の高速海中光無線通信に成功した。

「おそらく現段階では深海におけるトップの記録だ」

 

図表 実海域での試験の概要
図表 実海域での試験の概要

続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

スペシャルトピックスPR

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】WIRELESS SMART CITY

<Part1> ネットワークとともに進化する都市
<Part2> スマートシティネットワークの作り方
<Part3> 柏の葉に“Meta発”ミリ波無線の実験場
<Part4> スーパーシティ大阪 L5G広域利用の先行事例に
<Part5> ドローン「レベル4解禁」で変わる都市の物流
<Part6> ワイヤレス給電は都市をどう変えるか?

>>詳しい目次を見る

スペシャルトピックス

レッドハットインフラの自動化で34%の工数削減 レッドハットのネットワーク自動化2.0
人と人のコミュニケーションも効率化し、圧倒的な自動化を実現する。
i-PROセキュリティカメラの映像を遠隔監視 AI機能でマーケティングなどにも活用
幅広い用途に簡単、スピーディー、リーズナブルに対応するi-PRO Remo.
ジュニパーネットワークスWi-Fi 6E×AIで超効率ネットワーク 無線からWANまでクラウドシフト
ジュニパーはWi-Fi 6E時代に向けて、NW運用をAIとクラウドで効率化!
UniFiWi-Fi 6のライセンス費用がゼロに UniFiならコスパ抜群・簡単管理
圧倒的なコスパと手軽さで、オフィス、学校、工場、病院らが採用
日本マイクロソフト走り出した「5G網をAzureへ」計画
クラウド移行でキャリアは何を得るか

AT&Tの5GコアのAzure移行の狙いと進捗状況をマイクロソフトに聞いた。
ローデ・シュワルツ強みのミリ波技術で6G開発に貢献 1THz対応受信器もラインナップに
ローデ・シュワルツが得意のミリ波技術で6Gへの取組を強めている。

モバイル空間統計が直面した困難「ビッグデータのプライバシーを守れ」<連載>NTTグループのプロフェッショナルたち
モバイル空間統計が直面した困難「ビッグデータのプライバシーを守れ」
NTT Comサイバー攻撃事件の舞台裏「侵入者は対策メンバーのアカウントにもなりすましていた」<サイバーセキュリティ戦記>
NTT Comサイバー攻撃事件の舞台裏

「侵入者は対策メンバーのアカウントにもなりすましていた」
セイコーソリューションズISDNからインターネットへ スムーズな移行を可能にするには

ハードウェアを設置するだけ!ISDNからIP網への移行をフルサポート。

AirREAL-VOICE2簡単操作でマイグレーション実現
データ通信だけでなく通話・FAXも

アダプターの入替だけで移行が完了するMIの音声対応LTEルーター

NTTデータINSネットの後継ならお任せ!
移行で伝送時間短縮や負荷軽減

INSネットからの失敗しない移行方法をEB/FBの種類別に紹介しよう。

Wi-SUN AllianceWi-SUN認証デバイスが1億台突破
日本発の世界標準規格の普及加速

2.4Mbpsへの高速化など新たな進化も始まっている。

エヌビディアNTTとLINEが牽引する日本の自然言語処理、この2社がリーダーである理由

3月21日から開催の「NVIDIA GTC 2022 Spring」で知ろう!

ホワイトペーパー

アクセスランキング

tc202012

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます
当ウェブサイトはCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、プライバシーポリシーに同意したことになります。