キーパーソンが語る

「Society5.0時代のセキュリティを確立へ」手塚悟・慶大教授インタビュー

聞き手◎太田智晴(編集部) 2020.03.11

  • bookmark
  • Teitter
  • 印刷

慶應義塾大学 教授 手塚悟氏

サイバー空間と現実空間が融合した新たな社会「Society5.0」。このデータドリブンな世界で、データの真正性を確保できなければ、未来はきわめて脆弱な土台の上に成り立つことになる。そこでデータの真正性を担保する「トラストサービス」に尽力してきたのが手塚悟教授だ。5GMFのセキュリティ調査研究委員会の委員長も務める同氏に、Society5.0に向けたセキュリティと日本が進むべき道を聞いた。

 
――Society5.0やAI時代、データ駆動型社会など、来たるデジタル社会を表す言葉はいろいろありますが、今起きている変化の本質を捉える際、手塚先生は何が重要なポイントとお考えでしょうか。

手塚 「データのサウジアラビアはどこか」と私は皆さんによく問いかけます。その答えとしてはGAFAやBATが挙がると思いますが、今後もこのままの世界が続くのでしょうか。私は「トラスト(信頼)」という視点を加味すると、様相は変わってくると考えています。

Society5.0とは、私なりの理解ではデータドリブンアーキテクチャーです。複数のデータ群をインテグレートし、イノベーティブな新サービスを実現するところに、Society5.0の最も本質的な価値がある。だとすれば、重要なポイントの1つはデータの「真正性」になります。

インターネットは、かなり匿名化された世界として発展してきました。例えば、GAFAの本人登録も、自分で完全に自由に入力できる「オレオレID」です。

匿名化によってインターネットの発展が加速したのですから、私はこうした世界を否定するつもりは全くありません。しかし、Society5.0に向けては、トラストのある新しい世界も必要になります。

――安倍首相は昨年1月のダボス会議で、「成長のエンジンはもはやガソリンではなくデジタルデータ」としたうえで、「Data Free Flow with Trust(DFFT)」を提言しました。政府も、トラストある自由なデータ流通の実現が、これからのデジタル社会における最重要課題の1つという考えです。

手塚 そうです。「with Trust」が大事なのです。自由なデータ流通だけでは、フェイクニュースなど、いろいろな問題が起こります。IoTの世界も同じです。

慶應義塾大学 教授 手塚悟氏


――IoTの普及により、今後ますますデータドリブンな社会に移行していくなか、データの真正性を担保できなければ、世界は非常に脆弱な基盤の上に成り立つことになってしまいますね。

手塚 ですから、世界を見回しても、データの取り扱いの厳格化が進んでいます。まずEUでは、eIDAS規則(electronic IDentification, Authentication and trust Services Regulation)という法律が2014年に成立し、2016年より施行されています。

――eID(電子本人確認)とトラストサービスについて定めた法律ですね。トラストサービスとは電子署名やタイムスタンプなど、データの送信元のなりすましやデータの改ざん等を防止する仕組みのことです。

手塚 eIDAS規則は、eIDという日本のマイナンバーと同じような仕掛けでできていますが、これに対してGAFAを抱えるアメリカには、マイナンバーに相当する制度は現状なく、「政府のシステムをどうしていくか」という視点から非常に厳格な環境を作ってきています。どの政府職員が、いつ何の目的で、どの情報にアクセスしたかを全部トレースできる環境を構築しています。

アクセスできるデータのClassification(分類)も当然行われていて、Classified InformationとUnclassified Informationの分類が厳格にできています。現在はさらに我が国の防衛省の「保護すべき情報」に近いCUI(Controlled Unclassified Information)が整備され、米国防省の調達案件においては、サプライチェーンに関わる全組織に対してセキュリティ対応要求が出ています。
続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

著者プロフィール

手塚悟(てづか・さとる)氏

1984年慶應義塾大学工学部数理工学科卒、同年日立製作所入社。2009年度より東京工科大学コンピュータサイエンス学部教授、2016年度より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、2019年9月より慶應義塾大学環境情報学部教授、現在に至る。博士(工学)。2004年度情報処理学会論文賞、2008年度情報処理学会論文賞、IEEE IIHMSP2006 Best Paper Award、2013年度情報セキュリティ文化賞等を受賞

スペシャルトピックスPR

sumi2001
apresia2001
HACCP2001

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】6Gへ Beyond 5Gへの挑戦
<Part1>6Gは究極の無線通信 <Part2>総務省の6G推進戦略 <Part3>韓国の6G商用化は2028年 <Part4>100ギガ無線へのトビラを開くテラヘルツを人類の手に <Part5>6Gの重要コンセプト「超カバレッジ拡張」 <Part6>6Gへつながる進化の道筋「5G evolution」の全貌 

[インタビュー]東京大学 教授 中尾彰宏氏「ローカル5Gに価格破壊 王道と違う6Gへの道を探求」 [ソリューション特集]スモールビジネスWi-Fi [事例研究]ミクシィがホワイトボックス導入 ほか

>>詳しい目次を見る

ホワイトペーパー

スペシャルトピックス

都築電気テレワークと健康経営の実践4年目
その知見をワンストップで提供

働き方改革を推進する都築電気がテレワークに最適なグループウェア!

ドコモ・システムズNTTグループ23万人を支える
テレワークツール

伝統的な日本企業が作ったツールだから、かゆい所に手が届く!

WhatsUp Goldネットワーク監視に圧倒的使い勝手
安価な導入コストでも厚い支持

中小企業から通信キャリアまで、WhatsUp Goldが人気の理由とは?

MOVEit Transfer / MOVEit Automationデータ保護新時代のファイル転送
HIPPA、GDPRなど各種規制に対応

主要データ保護規制に準拠した安全なファイル転送ソフトの決定版!

moconaviBYODもセキュリティもこれひとつ
本当に明日からできるテレワーク

業務システムのリモート利用や公私分計をセキュアに実現するmoconavi

アライドテレシススモールビジネスのWi-Fi整備は
プロにおまかせ!

アライドテレシスなら安く・早く・楽に・安全に導入・運用してくれる

ソネットSMBに“ちょうどいい”Wi-Fi

高コストはかけたくないが、家庭用では性能が足りない。そんなジレンマを解決できるWi-Fiがあった!

ジュニパーネットワークス“ただのSD-WAN”はもう要らない!
LANもWi-Fiもすべてクラウド管理へ

今必要とされているのは、
“SD-WAN+α”のソリューションだ。

Citrix SD-WANシトリックスといえば「UX重視」
その哲学はSD-WANにも!

情シスも現場も幸せになれる
「SD-WAN」がここにある。

ソフトバンク目的・用途別にSD-WAN使い分け!
ソフトバンクが“3つめ”を出す理由

IaaS利用に最適な新SD-WANで
企業のクラウドシフトをサポート!

ブロードメディア・テクノロジーズAryakaの“SD-WAN as a Service”
なら全部お任せできる!

AryakaのSD-WANはコアからラストマイルまで一括で運用を任せられる

東京エレクトロンデバイスクラウド基盤にお勧めのWAF
高い検知性能でコスト削減

WAF市場のリーダー、F5製品は多角的分析による検知精度の高さが特徴だ

一般社団法人新規事業・新規市場創出研究会国内唯一の5G/6G調査研究会!

「5Gでの日本の遅れを取り戻したい」。5G、6G、MaaSをテーマにした調査研究会が4月に運営開始する。

sXGPsXGPはローカル5G導入の第一歩

まもなく帯域が拡張されるLTEベースの自営無線「sXGP」は、ローカル5G導入のファーストステップとなる!

マクニカネットワークスHACCP対策の切り札となるIoT
LoRaWANで冷蔵庫内もデータ取得

食品業界に義務付けられるHACCP。IoTで手間と人為的ミスを削減できる

住友商事マシネックスついにオラクルがSD-WANに参入!
 クラウド接続に最適な高品質NW

Oracle Failsafe SD-WANは、ネットワーク品質を劇的に変化させる。

APRESIA Systemsローカル5G参入を強力サポート

APRESIA Systemsの「ローカル5Gシステム」はローカル5Gに必要な機能に絞り込み、導入を強力サポート

アクセスランキング

tc_banner191122

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます