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【米国5G動向】5G時代の新ビジネスも米国発となるか?

文◎村上麻里子(編集部) 2019.08.19

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5Gを大々的にアピールする
ベライゾンのホームページ

“世界初”の5Gで実力を示したベライゾン。残る3社も年内に開始予定だ。4G時代には米国から多くの新ビジネスが登場したが、5Gでも「米国発」が中心となるのか。米国通信事情に詳しい識者の話をまとめた。

 
4月3日、米通信キャリア最大手のベライゾンが、スマートフォン向け5Gサービス(以下、モバイル5Gサービス)をシカゴとミネアポリスの一部地域で開始した。

同社は昨年10月より、「世界初の5G商用サービス」として家庭向けブロードバンド(FWA)サービス「Verizon 5G Home」をサクラメントやロサンゼルスなど4つの州で提供している。今回は、「モバイル向けとして世界初の5Gサービス」という位置付けだ。

ベライゾンでは当初4月11日のスタートを予定していたが、韓国でSKテレコム、KT、LG U+が一斉に3日からサービスを始めることが明らかになったのを受け、急きょ計画を前倒しした経緯がある。「ベライゾンには、5Gで世界初になろうという強い意志を感じる」と野村総合研究所(NRI)ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 テレコム・メディアグループマネージャーの亀井卓也氏は話す。

 

(左から)野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 テレコム・メディアグループ マネージャーの亀井卓也氏、同部 コンサルタントの伊藤大輝氏、同部 副主任コンサルタントの澤田和志氏
(左から)野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 テレコム・メディアグループ マネージャーの亀井卓也氏、同部 コンサルタントの伊藤大輝氏、同部 副主任コンサルタントの澤田和志氏

 



モバイル5Gサービス開始時点の対応スマホはモトローラの「MotoZ3」1機種のみ(5月からサムスン電子「Galaxy S10 5G」が販売開始)。Moto Z3自体はLTE端末であり、背面に5G対応モジュール「5G moto mod」を“合体”させることで5Gスマホとして利用可能になる。

モトローラの「Moto Z3」は、背面に5G対応モジュール「5G moto mod」を“合体”させることで5Gスマートフォンとして利用できる
モトローラの「Moto Z3」は、背面に5G対応モジュール「5G moto mod」を
“合体”させることで5Gスマートフォンとして利用できる



SNSなどには、ベライゾンのモバイル5Gサービスを実際に体験したユーザーの反応が数多くあがっているが、それらを総合すると、場所によってつながらないところはあるものの、下りについては平均600~700Mbpsのスピードが出ている。「エリア展開の難しい28GHz帯を使っているにもかかわらず、このタイミングでのサービスインは早いと言えるだろう」(亀井氏)。

 

図表1 米国における5Gのタイムライン
図表1 米国における5Gのタイムライン


3GPP準拠で「世界初」のAT&Tところで、ベライゾンと競い合った韓国キャリアだけでなく、米国第2位のAT&Tも「我々が世界初」と主張して譲らない。

同社は昨年12月に、12都市でモバイル5Gサービスを開始した。ベライゾンが独自方式「5GTF」に基づくのに対し、AT&Tは3GPPに準拠したサービスであることが「世界初」の根拠となっている。

しかし、AT&Tが提供しているのはホットスポットでモバイルWi-Fiルーターを使ったサービスで、一部の企業や個人のみを対象とする。このため、モバイル5Gサービスとしては、ベライゾンが世界初と見た方がいいだろう。

5月31日には、米国第4位のスプリントもモバイル5Gサービスをスタートした。第3位のT-モバイルは2019年中の開始を予定している。

スプリントとT-モバイルの5Gサービスは今後、両社の合併問題の行方に左右されそうだ。

昨年9月に米ロサンゼルスで開催された「MWC Americas 2018」において、スプリントのマルセロ・クラウレCEOは「合併が実現したら、安価な5Gサービスを全国展開する」と明言したとされる。

山間部や国立公園などルーラル地域の多い米国で、「全国」がどれほどの規模を意味するのか定かではない。しかし、情報通信総合研究所ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員の中村邦明氏によると、「スプリントはルーラル地域に注力しており、スプリントショップも積極的に展開している」という。

情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員 中村邦明氏
情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員 中村邦明氏



また、周波数について見ると、T-モバイルは28/39GHzのミリ波帯のほか、オークションを通じてローバンドの600MHz帯も獲得している。ローバンドへの5G導入は、URLLC(超低遅延・高信頼通信)の提供に欠かせない。他方、スプリントは2.5GHz帯を保有する。

両社が一緒になれば、周波数ポートフォリオで優位に立つことは確実だ。T-モバイルはかつて「アンキャリア(通信キャリアでないこと)」戦略のもと、携帯電話市場の商慣習を打ち破るような革新的なサービスを次々に投入してきた。合併が現実のものとなれば、潤沢な5G周波数を武器に、上位キャリアからユーザーを獲得するための積極的な戦略を打ち出してくることも考えられる。

 

図表2 キャリア各社のサービスまとめ
図表2 キャリア各社のサービスまとめ


モバイル5Gの有料化に遅れ
5Gで注目されるポイントの1つに料金がある。

ベライゾンは、LTE向けの「Unlimited(使い放題)」プランに10ドル(約1080円)を上乗せした“追加課金方式”を採用する。

Unlimitedには「Go Unlimited」(月額75ドル)、「Beyond Unlimited」(同85ドル)、「Above Unlimited」(同95ドル)と3種類のプランがある(料金は1回線の場合)。このうち上位2つのプランに10ドルが加わると、日本円にして1万円前後で5Gサービスを利用できる計算だが、この追加課金は一時停止されている。

スプリントのモバイル5Gサービスは、Unlimitedの最上位プランに加入していれば、追加課金なしで利用することが可能だ。

一方、AT&Tはサービスが限定的なこともあり、無料で提供している。実は同社では4月からの有料化を発表していたが、6月になっても無料のままだという。

このように、米国ではモバイル向け5Gの有料サービスが事実上まだ始まっていない。NRI ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 副主任コンサルタントの澤田和志氏は「今はまだ追加課金するだけのベネフィットを還元できないからではないか」と推測。そのうえで、5Gのキラーアプリ/コンテンツが登場していない現状においては、「ユーザーが“お試し”感覚で手軽にLTEから5Gに移行できるので、戦略的に正しい」と評価する。
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