<特集>海のIoTオールジャパンで船舶IoT――NTTがエッジコンピューティングで参画

船舶の航行データを活用して海事産業をデジタル化するIoS(Internet of Ships)基盤づくりが始まった。業界全体でデータを共有し、海運や造船、船舶向け機器/サービス開発に役立てる。

海運や造船をはじめとする多様な産業で構成される海事業界で今、業界全体をデジタライゼーションする取り組みが始まっている。船舶の航行データを共有し活用するための共通基盤「IoSオープンプラットフォーム」(IoS-OP)だ。推進団体である「IoS-OPコンソーシアム」が5月末に発足。ICT業界からもNTTや富士通らが参加している。

IoS-OPは、海運会社が取得した航行データを、造船所や船舶機器メーカー、サービス事業者等に提供するための“船舶IoT基盤”だ(図表1)。船舶の性能向上や新サービス開発につなげるのが狙いである。船の検査・認証を行う日本海事協会の子会社シップデータセンター(ShipDC)が運用を担う。

図表1 Internet of Ships Open Platform構想
図表1 Internet of Ships Open Platform構想

船舶IoTの国際標準規格に対応海運会社はこれまで独自に、運航状態や燃費、船内機器の状態等のデータを収集し、陸上と共有するマネジメントシステムの開発を行ってきた。IoS-OPコンソーシアムの中核メンバーである日本郵船は子会社のMTIと「SIMS(Ship Information Management System)」を開発。運航の効率化や燃費削減等を実現してきた。

このSIMSを発展させ、船上で収集したデータを多様なアプリケーションで共有・活用できるようにする“次世代SIMS”の開発に参加しているのがNTTとNTTデータだ。次世代SIMSの最大の特徴は、船上・船内の各種センサー/機器から発生するデータに関する国際標準規格に対応していること。ShipDCにデータを送信することでIoS-OPでの利用も可能になる。

NTTが提供する技術のうち、肝になるのがエッジコンピューティング技術だ。航海情報記録装置(VDR)やエンジン等の機関装置から船内のエッジサーバーにデータを集約。一次解析を行った後、衛星通信を使ってデータセンター/クラウドに送る(図表2)。この開発に携わる、NTT未来ねっと研究所 ユビキタスサービスシステム研究部 主任研究員の寺内敦氏は「通信帯域が狭いため、データをすべて送ることは現実的ではない。エッジを使えば通信コストが低減できる。また、船の運航に使うためには、できるだけ船上で処理するほうがよい」と話す。

図表2 次世代船舶IoTのイメージ
図表2 次世代船舶IoTのイメージ

月刊テレコミュニケーション2018年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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