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[特集]IoT無線を自営する

<EnOcean Long Range>LPWAも電源レスで

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2018.03.15

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EnOceanには「LPWA版」もある。JAふくしま未来は、電源レスで果樹園の温度を見える化して霜害対策を効率化した。さらに防災・インフラ監視など、電源不要のIoTは「屋外」にも広がり始めている。

 
光や熱、振動といった身の回りの微細なエネルギーを電力に変えるエネルギーハーベスティング(環境発電)により、電源がなくても運用できるIoT無線技術「EnOcean」。その長距離通信仕様である「EnOcean Long Range」の導入が、世界に先駆けて日本で広がり始めた。

先鞭を付けたのはNTT東日本だ。2017年春にEnOcean Long Rangeを活用した世界初のIoTソリューション「eセンシング For アグリ」の販売を開始した。これは、EnOcean Long Range対応の送信機/受信機やセンサーを用いてセンサーシステムを構築し、売り切りで提供するもの。光回線やオンラインストレージサービスと組み合わせて提供される。

ファーストユーザーとなったふくしま未来農業協同組合(JAふくしま未来)は、特産の桃や梨などに大きな被害を与える霜害対策に活用している。

EnOcean Long Range対応センサーノードのイメージ
EnOcean Long Range対応センサーノードのイメージ。
ポールの左側が照度センサー、手前が温湿度センサー、右が送信機


霜害対策要員60名が3名にEnOcean Long Rangeは、欧米を中心に照明制御/ビルオートメーションなどで普及しているEnOceanの用途を「屋外」にも広げることを狙い、独エンオーシャン社が2012年から開発を進めてきた広域無線技術だ。LPWA版のEnOceanといえる。

伝搬特性に優れるサブGHz帯の免許不要帯域(日本では920MHz帯)を利用、センサーデバイスからサーバー側への片方向通信を基本とすることで省電力性を高めるといったEnOceanの特徴を継承しつつ、出力を従来の1mWから10mWに増強。さらに高利得アンテナを利用することで、見通し通信で3~4km、ビルの林立する都市部でも300~400m程度の通信を可能にした。変調方式や運用周波数が変更されているため、既存のEnOceanとの互換性はない。

日本では、NTT東日本が同技術に着目し、2013年から千葉県や山梨県でエンオーシャン社とフィールド試験を実施してきた。

eセンシング For アグリは、その検証結果を踏まえて商用化されたものだ。田畑や果樹園などに温湿度、照度などを測定するセンサーを設置し、そのデータを内蔵のソーラーパネルで稼働するEnOcean Long Range対応送信機で農協の事務所などに設置された受信機に送り、インターネット経由でNTT東日本のオンラインストレージサービスに集約する。利用者はスマートフォンやPCから現地の状況を把握でき、農作業の効率化が図れる(図表)。

 

図表 eセンシング For アグリの概要
図表 eセンシング For アグリの概要


JAふくしま未来では、eセンシング For アグリの導入以前、霜注意報が発令されると農協職員や組合員が60名体制で散在する果樹園の気温を測定し、危険温度に達する前に火を炊き、地表温度の低下を防ぐという対策を行ってきた。

それがEnOcean Long Rangeを活用することで、事務所や自宅に居ながらにして、37カ所の果樹園の気温をプラスマイナス0.5℃の精度で把握できるようになり、対応人員を3名に削減できたという。

NTT東日本では、全国の農協や生産法人への提案を現在進めているが、様々な用途での引き合いが来ているという。さらにEnOcean Long Rangeを防災やインフラ管理、観光分野などにも展開していく考えだ。

また、eセンシング For アグリに採用されたEnOcean Long Range対応センサーシステム「NSOS-100」の開発に携わったNISSHAサイミックスの代表取締役を務める吉川久男氏によると、NTT東日本以外にも、「超音波センサーを使って、鉄道の鉄橋の下を流れる河川の水位測定に利用しようとするものや、崖崩れの検知を目的にしたものなど、多くの案件が動き出している」という。
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