「ITの力を使って、スマートに業務工数とコストを半分にする。そのためにAI(人工知能)を社員のポケットに入れよう」――。ソフトバンク 代表取締役社長 兼 CEOの宮内謙氏は、昨年7月に開催されたイベント「SoftBank World 2016」でこう語った。
同社は「Half and Twice」をキャッチフレーズに、2015年4月から生産性向上の取り組みを始めている。目標は、業務工数やコストを半分(Half)にし、生産性や創造性は2倍(Twice)にすること。この取り組みの1つとして、AIシステム「SoftBank Brain」を開発中だ。
「これまで12時間かかっていた仕事を6時間でできるようにする。残りの6時間のうち、4時間で残業をなくし2時間はクリエイティブな仕事に回す」と宮内氏は構想している。
付加価値を生まない単純作業はAIに任せ、人間は付加価値の源泉となるクリエイティブな業務に集中することで、高い生産性を実現しようとしているわけだ。
“数秒”で最適な資料を提示SoftBank Brainは、日本語版のIBM Watsonやソフトバンクが自社開発したAIなどで構成されている。活用分野として検討されているのは、「法人営業」「コンタクトセンター」「社員サポートセンター」「ショップ」「人事」「財務」など(図表)。早速、法人営業向けのSoftBank Brainが稼働している。
図表 「SoftBank Brain」の活用分野
これは、法人営業社員が行う顧客企業へのサービス提案をサポートするAIだ。利用方法はチャットボットに近く、スマートフォンにインストールした「SoftBank Brainアプリ」に向かって社員が音声やテキストで質問すると、テキストや資料、URLなどで答えを返してくれる。
例えば、営業社員が「A社にどんな提案をすればいい?」と聞くと、ソフトバンクが持っている膨大な商材の中から最適な提案内容や提案資料を“数秒”で見つけ出し、画面に回答を表示できるという。また、「B社の営業担当は?」と聞けば、担当営業の名前とコンタクト先に加え、チームメンバーや上長も教えてくれる。
すでにSoftBank Brainの効果は出始めている。同社によれば、これまで1日平均40分かけていた、商材や顧客企業の情報収集にかかる時間が短縮され、それ以外の業務に集中できるようになったそうだ。また、サービスに関する質問を顧客から受けた際には、その場でスマートフォンで調べて回答・解決できるなど、顧客対応のスピード感が増しているという。