国内の監視カメラ市場は、デジタルがアナログを上回り、ネットワーク上で音声や映像を遠隔地に伝送できるIP監視カメラが中心となっている。
このIP監視カメラは、ICT分野において今後の成長が見込まれる市場の1つだ。
首都圏や観光地では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた観光客の増加をにらみ、ホテルや商業施設の建設ラッシュが始まっている。国内外から多くの人が集まるとテロや犯罪の危険性も高まるだけに、これらの建物への監視カメラの導入は必須であり、需要の底上げにつながることは確実だ。
また、コンビニエンスストアや小売り、飲食業など多店舗展開している企業の間では各拠点にカメラを設置し、その映像をクラウド上に集めて本社(本部)で一括管理する動きが広まっている。
こうした状況から、IP監視カメラの国内出荷台数は拡大傾向にある。調査会社テクノ・システム・リサーチによると、2015年は前年比28%増の59万950台となった。今後も年率10~20%のペースで伸び、19年には119万5760台と100万台の大台を超えると予想する(図表1)。
図表1 ネットワークカメラの国内出荷台数
一方、国内におけるベンダーシェア(台数ベース)は、パナソニックが56.9%で引き続きトップを維持している(図表2)。上位6社の顔ぶれに大きな変化はないが、そのシェアはいずれも前年からやや下がっている。
図表2 2015年の国内ベンダーシェア
その背景にあるのは、HIKVISION(ハイクビジョン)やDahua(ダーファ)といった中国勢の存在感がここ1~2年の間に高まっていることだ。
グローバルでシェアトップのハイクビジョンは、日本市場について出遅れていたが、販売代理店網の整備が進み、急速に売上を伸ばしている。15年の国内シェアは1.7%と上位陣にはまだ及ばないものの、出荷台数は対前年比4倍の伸びを記録した。最近は中小企業や小規模店舗でもIP監視カメラの導入が進んでいるが、機能よりも価格が重視されるこうしたマーケットで、安価な同社製品が支持を集めているようだ。
テクノ・システム・リサーチ マーケティングディレクターの池田英信氏は「価格競争では中国ベンダーが圧倒的な優位にあり、日本勢は太刀打ちできない。それだけに、付加価値で差別化を図っていくことが求められる」と指摘する。
実際、国内ベンダーはカメラ本体の高機能化や、画像認識・映像解析といったソリューションとの連携によって付加価値を高める方向性にある。
各社の具体的な取り組みはどうなっているのか。「カメラ機能」と「ソリューション」に分けて見ていくことにする。