ビデオ会議を変革する2つの新技術「HEVC」と「WebRTC」とは?――アバイアがビデオ事業戦略

ビデオ会議ベンダーのラドビジョン買収完了から丸1年を迎えたアバイアがビデオ事業説明会を開催。この1年間の成果や、今後注力していく2つの新技術「H.265/HEVC」と「WebRTC」などについて説明した。

米アバイアによるイスラエルのビデオ会議ソリューションベンダーRadvison(ラドビジョン)の買収が昨年6月に完了してから1年が経過した。これを受けて、日本アバイアは2013年6月21日、ビデオ事業に関する記者説明会を開いた。

日本アバイア 代表取締役社長のロバート・スチーブンソン氏は冒頭、「アバイアの本流であるボイスの開発を加速するため、我々は矢継ぎ早に戦略的買収を繰り返してきた。ラドビジョンの買収は、その総仕上げとなるもの。世界一の音声技術に、ラドビジョンの世界一のビデオ技術が加わった」とその意義を語った。

アバイアの歴史
アバイアの歴史。右上にある通り、ここ数年、アバイアは買収を活発に行ってきた

続いて、ラドビジョンのジェネラルマネージャであるエイタン・リブネ氏、そしてCTOのヤイール・ヴィエナー氏が、この1年間の成果と今後の取り組みについて話した。

まずリブネ氏は、「私たちは、ビデオ業界において最良のポートフォリオを有していると自負しているが、それをアバイアは手に入れた。しかも、単に技術や製品を獲得しただけではない。ラドビジョンのイノベーションや評判、営業部隊などの人員、文化までをも手に入れたのだ」と説明。

ラドビジョンのポートフォリオ
ラドビジョンのポートフォリオ

さらに、「企業買収では通常、統合に伴う様々な問題のため、売上高の減少や開発の遅れなどが起こるものだが、ラドビジョンではそのようなことはなかった。この1年間に売上は大きく成長したし、これまでで最も多くの新製品を投入できた1年の1つでもあった」と語った。

また、ラドビジョンの買収を機に、アバイア社内におけるビデオ会議の活用が本格化。出張にかかる交通費が1年間で1800万ドル削減されたほか、ワークスタイルや意思決定方法などにも変化が起きているという。

「支配的な標準規格になる」 来年初頭にHEVC対応製品が登場

今後の技術開発について説明したのは、CTOのヴィエナー氏である。

同氏ははじめにビデオ関連技術の歴史を振り返り、「新しいビデオコーデックが発表されるごとに市場は進化してきた」と解説。そのうえで、「2007年以降、ずっと業界の話題をさらってきたのがH.264/SVCだ。SVCは業界の王様のような標準規格。これでHD(High Definition)の革命が起きた」とした。ラドビジョンは、このSVCの開発で中心的な役割を果たしたほか、最初の製品を市場に投入したのも同社だったという。

SVC(Scalable Video Coding)は、ネットワークの状態などに応じて動的に映像品質を調整できる点などが特徴のビデオコーデック技術だ。

ビデオコーデックの歴史
ビデオコーデックの歴史

ヴィエナー氏によれば、今後も当面SVCがビデオ市場の主力規格であり続けるというが、まもなく次の2つの新規格が「ビジュアルコミュニケーションの世界に多大な影響を与えていく」という。

1つは、H.265/HEVCである。HEVC(High Efficiency Video Coding)は、従来規格の2倍のデータ圧縮率を実現。「720pのHDを300kbps未満で達成できる」という。また、解像度が向上し、4K(Ultra HD)にも対応。さらには、マルチコアCPUでより効率的に並列処理できるアーキテクチャになっているという。

数年先のことになるというが、「業界において支配的な標準規格になると考えている」とヴィエナー氏は紹介。アバイア/ラドビジョンとしては、来年はじめにHEVC対応の最初の製品を投入する予定だという。

H.265/HEVCの主な特徴
H.265/HEVCの主な特徴

もう1つの新技術は、WebRTCである。これは、Webブラウザ上でビジュアルコミュニケーションを実現するための技術。プラグインが不要で、NATトラバーサルの機能も備える。「WebRTCの夢は、何千万もの開発者が20行ほどのコードを書けば、Webベースのコミュニケーションを開発できるようにすることだ」

アバイアでも、「すでに2年間にわたり、このWebRTCの技術をコンタクトセンターに実装するべく開発を進めてきた。また、エンタープライズにも展開していく計画だ」という。

WebRTCの主な特徴と目標
WebRTCの主な特徴と目標

スチーブンソン氏によると、日本の顧客向けでは、ビデオ技術を活用したコンタクトセンターの実現が、「目下の筆頭のテーマ」とのこと。WebRTCを活用することで、例えばFAXのリボンの交換方法について、ビデオを使って説明できるようになるなど、オペレーターの生産性や顧客満足度の向上などが可能になるという。

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