韓国モバイルビジネス動向ウォッチ[第2回]SKテレコムとKTが推進する「Nスクリーン」はクラウドサービスのキラーとなるか?

モバイル先進国、韓国をウォッチしながら、新しいモバイル関連ビジネスの種を見つけていく本連載。第2回は、韓国で注目のクラウドサービス「Nスクリーン」と教育専用Androidタブレットを取り上げる。

韓国でシェアトップの携帯電話事業者、SKテレコムは2011年1月3日、Nスクリーンサービス「Hoppin」をサポートする専用スマートフォン「Galaxy S Hoppin(SHW-M190S)」(サムスン電子製)を1月中に発売すると明らかにした。端末仕様は通常のGalaxy Sとほぼ同様だが、HDMI端子を装備する点やユーザーインターフェース(UI)が異なっている。

Nスクリーンとは、テレビ、PC、スマートフォン、タブレットなどの異なるデバイスで、同じコンテンツを同じUIで利用できるサービスだ。特定の1つのスクリーンではなく、いろいろな(n種類の)スクリーンでコンテンツを楽しめることから、Nスクリーンという呼び方がされている。

SKテレコムのNスクリーンサービス「Hoppin」

例えば、出勤前に自宅のPCで電子書籍を購入したとしよう。Nスクリーンなら、ユーザーはそのまま外出するだけで、その電子書籍を通勤電車の中でスマートフォンを使って読むことができる。さらに、どこまで読んだかブックマークしておき、会社のPCやタブレットで続きを昼休みなどに読むことも可能だ。映画コンテンツなども一度購入すれば、あらゆるデバイスで“連続的”に見ることができる。

Nスクリーンは、すべてのコンテンツデータや購入履歴、ブックマークなどをクラウドで管理することで、こうしたシームレスなサービスを実現している。技術的にはさほど難しいとは思われず、実際、同様のコンセプトのサービスは他にもあるが、専用スマートフォンまで発売して展開するところが韓国らしい。

韓国第2位の携帯電話事業者、KTもNスクリーンには力を入れている。同社の「U Cloud Home」は、クラウド上のサーバーに置いた個人ファイルをPCやスマートフォンなどから利用できるというサービスだ。KTでは今後、タブレットやインターネット対応テレビのサポートも計画している。

Nスクリーンはクラウドを活用したサービスであるが、ポイントはそこにあるわけではない。コンテンツへの接触時間は減少傾向にあるが、SKテレコムやKTが目指すのは、コンテンツの利用環境を向上させることでコンテンツへの接触時間を増やし、ひいてはユーザーを自社のサービスに囲い込むことだ。日本の携帯電話事業者にも参考になるモデルだろう。

橋本清治(はしもと・せいじ)

IT業界での30年の経験を生かし、某外資系通信機器ベンダー勤務の傍ら、エムアンドエムリサーチを運営。主に海外の通信事情リサーチやベンダーの日本進出の支援を行う。現在は特に韓国のモバイル通信事情を注視している。表面的な事実の調査だけでなく、必要があれば現地調査も行う行動派リサーチャ。“真実は体で確かめる”が身上。コンタクトはinfo@mmrjp.comまで

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