「スマートシティといっても、最新の技術を見るためにその街に行きたいと考えるのはテックオタクだけだろう。例えば俺はクラフトビールがうまい街に行きたいんだ。その裏側できちんとデジタル技術が使える状態になっている街を目指そう」。元ヤフー社長で、東京都副知事の宮坂学氏はメンバーにこう話した。
東京都は2020年2月、「スマート東京実施戦略」を発表した。5Gネットワークの早期構築を目指す「Tokyo Data Highway」、都庁のデジタルシフトを強化する「都庁のDX」、そしてスマートシティ事業である「街のDX」の3つが柱だ。
街のDXについては西新宿、都心部、ベイエリア、南大沢、島しょ部の5つを「先行実施エリア」に設定して具体的な取り組みを進めているが、冒頭の宮坂副知事の言葉にもあるように、「闇雲にデジタル技術を都市へ実装しようという話ではない」と東京都 戦略政策情報推進本部 ICT推進部 次世代通信推進担当課長の向本圭太郎氏は語る。「自分たちの街がどうなりたいのか。その目指す姿をICTで実現していくのがスマートシティ化だ」と東京都 戦略政策情報推進本部 戦略事業部 先端事業推進担当課長の松永武志氏は説明する。
東京都 戦略政策情報推進本部 戦略事業部 先端事業推進担当課長 松永武志氏(左)、
同本部 ICT推進部 次世代通信推進担当課長 向本圭太郎氏
そこで西新宿ではまず、同エリアの課題について仮説を立てたうえで、その仮説をもとにしたアンケートを西新宿エリアで働く人、住む人、訪れる人に対して実施した。「ファクトに基づいて、デジタル技術を実装していきたいと考えた」(向本氏)。3000人超の回答から導き出されたのは、「地域の魅力創出」「認知度向上・地域への参画促進」「移動環境の整備」「新たなワークスタイルの確立」の4つのテーマ。例えば移動環境については、「西新宿エリアは広く、隣の街区に行くのも大変」といった声が寄せられた。
この4テーマに沿って実証実験を募集したところ、民間から約50件の応募があり、7件の事業を選定した。今年度はスマートサイネージを使った街の情報発信、ARによる街歩きガイドや、落語などの伝統文化を学びながら異業種・異世代間交流を促す場の提供などの実証実験を開始している。4月以降は、オンデマンドタクシーの実証実験なども控えている。