あるローカル5G関連ニュースが今秋、大きな注目を集めた。インターネット関連事業を手がけるGMOインターネットが、ローカル5Gの予備免許を取得したというニュースである。注目を浴びたのは、これが国内初のSA(Stand Alone)構成によるローカル5Gの予備免許取得だったからだ。
コアネットワークや無線区間の通信制御に4Gを用いるNSA(Non-Stand Alone)構成とは異なり、すべてを5G化するSA構成の特徴は、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」といった5Gの特徴をフルに発揮できることだ。
図表1 NSA構成とSA構成の違い
ただ、国内大手キャリアも現状はNSA構成で5Gサービスを提供していることからも分かる通り、SAの実用化は少し待つ必要があった。しかし、いよいよローカル5Gにおいて、国内初のSA構成の予備免許取得が実現したのである。
GMOインターネットがSA構成で予備免許を取得したのは、東京・渋谷にあるグループ本社「セルリアンタワー」とグループ第2本社「渋谷フクラス」。まずは「渋谷フクラス」のコミュニケーションスペースにローカル5G環境を整備し、2020年内に5G活用の試験環境として社内外のエンジニアやクリエイターなどに開放する計画だ。
2019年秋からローカル5G導入を支援し、複数のサポート実績SA構成はローカル5Gの「本命」と予想されているが、この国内初の予備免許取得を支援したのが、モバイルネットワークの構築・運用やIoTデバイスの開発などで数多くの実績を持つレンジャーシステムズである。仕様策定から総務省との交渉などまでを担った。
「今まであまり表に出ないようにしていましたが、実は2019年秋からローカル5G導入支援サービスを提供しており、すでに複数のローカル5G案件を手掛けています」。レンジャーシステムズ プラットフォーム事業部部長の成田翔一氏はこう語る。
(左から)レンジャーシステムズ プラットフォーム事業部 部長 成田翔一氏
同事業部 プロダクトマネージャー 堀田明広氏
GMOインターネットの案件では、複数のベンダー/SIerの提案の中から、レンジャーシステムズの提案が選ばれた。
GMOインターネットは2020年1月、ローカル5Gの免許申請を行うと報道発表している。これを知ったレンジャーシステムズは、人づてに担当者と会う機会を得て、SA構成とNSA構成の違いや日本で利用できるローカル5G基地局などの説明をしながら、GMOインターネットの要望をヒアリング。同社に最適なプランを練り上げたという。
免許の申請先である総務省 関東総合通信局との打ち合わせなどを経て、申請書類を提出したのは6月のこと。9月に渋谷フクラス(実験試験局)、10月にセルリアンタワー(実用局)の予備免許が交付された。
より安価な新興ベンダーの基地局も選定可能レンジャーシステムズのローカル5G導入支援サービスは、ローカル5Gに関わる全工程をワンストップでサポートできるのが特徴だ。
(1)企画、(2)製品選定、(3)免許申請、(4)構築、(5)運用保守のすべてについて支援体制を整えており、免許申請等の必要なプロセスのみの支援を相談することもできる。
図表2 レンジャーシステムズのローカル5G導入支援サービスのメニュー
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企画段階では、レンジャーシステムズの担当者がローカル5Gの導入目的や用途、導入場所などのヒアリングを行い、適した無線システムの構成や利用周波数などを提案する。
「『ローカル5Gをやりたいが、どうすればいいのか』――。この一言さえいただければ、あとは必要な情報をご提供しながら、我々がプランを組み上げていきます」と成田氏は語る。
ローカル5G以外の無線システムを提案することもあるという。
「お客様のご要望を詳しくお聞きすると、必ずしもローカル5Gである必要がないケースもあります。そうした場合、例えば『まずはプライベートLTEを導入し、ローカル5Gが低廉化してきてからアップグレードしましょう』などと提案しています」(成田氏)
レンジャーシステムズでは、ローカル5Gの導入を目的化した企画提案は行わない。ローカル5G以外の選択肢も含めて検討し、ユーザー企業に最適な無線システムを企画提案するのが、同社のローカル5G導入支援サービスだ。
図表3 用途や予算などに応じて最適なシステムを提案
基地局などの製品選定も任せたい。なぜなら、レンジャーシステムズなら大手グローバルベンダーだけではなく、より安価な台湾や米国などの新興メーカーの製品も調達できるからだ。「一般企業でも採用できる価格でのローカル5G導入も可能になっています」(成田氏)という。
ローカル5GやプライベートLTEの運用に不可欠なSIMの調達やそのプロファイル開発についても、MVNO支援でSIMを熟知しているレンジャーシステムズに依頼すれば、柔軟かつ迅速な対応をしてもらえる。eSIMも今後提供予定だ。
ユーザー企業自身で行うには非常にハードルが高いプロセスとしては、免許申請も挙げられる。
「例えば、ローカル5G用の専用書式は現在なく、4G用の書式を5G用に書き直して提出しなければなりません。我々も最初はかなり苦労し、書類の再提出を何度も求められました。特にSA構成の免許申請については、行政サイドもまだ慣れているわけではなく、豊富な経験が必要になります。国内初のSA構成の免許取得を支援した我々の経験が大いに役立つと思います」とプロダクトマネージャーの堀田明広氏は話す。
システム構築後の運用保守についても、MVNO向けに提供してきた24時間・365日体制のサポートサービスが利用できるから安心だ。トラブル発生時には、実際にシステムを構築した担当者と連絡を取り、迅速に問題解決を図る。
レンジャーシステムズがローカル5G導入支援サービスで大事にしていることは「案件の数は追わない」ことだという。「1つひとつの案件に丁寧に取り組むためです」と成田氏は力を込めた。
<お問い合わせ先>
レンジャーシステムズ株式会社
担当者:プラットフォーム事業部 成田
URL:https://ranger-systems.co.jp/service/connection/local5g-solution/
TEL:03-6257-1850
E-Mail:information@ranger-systems.co.jp