今年6月末に5G契約数が1億を突破した中国。各キャリアの発表をまとめると、10月12日時点で総契約数は1億5000万を超えた。4G端末のまま「5Gプラン」を契約する利用者も多いため実質的な5Gユーザーは半数強と言われているが、それでも2019年11月の商用化から1年弱で急速な伸びを見せている。
基地局数は6月末時点で計41万、年末に60万局を超える予定だ。実質的な5G加入者も年内に1億人を突破する見込みである。9月にはSA(スタンドアロン)構成の5Gサービスも広東省深セン市でスタート。半年以上前に5Gを商用化した米韓を追い越したと言える状況だ。
この急成長には「コロナ禍も大きく影響している」と語るのは、慶應義塾大学 総合政策学部 講師(非常勤)の華金玲氏だ。「昨年末時点では4Gの投資も回収できていない段階であり、5Gに投資することにキャリアも乗り気でなかった」。だが、人の外出・移動が制限されると「国民生活と経済のすべてがネットワークに依存するようになり、5Gの整備とアプリ開発が急速に進んだ。今年2~3月の間に中央・地方政府から5G推進に向けた指示が13本も出ていることからも、危機感が大きかったことがわかる」。
慶應義塾大学 総合政策学部 講師(非常勤)の華金玲氏。
Webサイト「5G in China&Japan」で中国の5G関連情報を発信している
5G導入企業へ1億円超を補助中国の動きで特に注目されるのが、地方政府の強力なバックアップだ。
中国キャリアは国有企業であり、政府方針を反映したかたちで、省・市ごとの子会社が5Gインフラ整備を進めている。地方政府が政策・資金的にこれを支援。例えば山東省は、9月末に5G基地局が4万基に到達し、省内16市の主要エリアをカバーした。5Gアプリ開発等への支援も含めた投資額は省全体で69.5億元(1100億円)にも上るという。
同様に北京や上海、深セン、広州市などでも、インフラ整備はもちろん、5G導入企業やアプリ開発者、人材育成と幅広い支援が行われている。
広州市が6月に承認した「5G奨励政策」では、図表に挙げた数々の助成・奨励金が支給される。5G導入プロジェクトを進める企業に対して最大で1億5000万円を超える助成が行われるほか、人材育成にも巨額の資金が投入されている。
図表 5G 奨励政策の例(広州市)
一部の市では、SAも早期に導入されている。華氏によれば、「メディア報道などでわかっている範囲では、深セン市、北京市、重慶市、山東省、江蘇省がSAの構築を発表している」。
なお、中国キャリアは2.6GHz帯および3.7GHz帯で5Gを展開しているが、ミリ波の導入準備も進んでいる。複数の研究機関でミリ波用チップセットの開発などが進んでおり、2021年からの商用化が計画されている。