韓国では5Gの開始当初、スマート工場やスマートシティといったBtoB分野での活用が先行すると見込まれていた。実際にはBtoCでの反応の方が早く、現時点で国民の10人に1人が5G加入者となっている。
だからといって、BtoC分野で5Gならではのキラーコンテンツといえるサービスが登場したわけではない。5GのBtoCサービスは現状ではAR/VR活用の娯楽分野が中心で、2020年にはコマースや健康など生活密着分野でのサービスが順次拡大される計画である。
開始初年度のBtoCの好調ぶりは、通信キャリアがマーケティング費用を投入して端末価格を引き下げたり、VR用ヘッドマウントディスプレイをキャンペーンで無料配布したことなどに支えられた。もともと新サービスに敏感なアーリーアダプター層が多い市場であることも要因と考えられる。
一般財団法人マルチメディア振興センター 三澤かおり氏
BtoBでは工場のほか、病院や士官学校、建設現場、港湾、スマートシティ分野での5G導入が進められている。
自治体における5G導入事例としては、ソウル市の公共交通安全システムや世宗市のシャトルバス自律運行などがある。BtoBの本格的な普及は2020年以降となる見通しだ。BtoBが当初の予想よりもスローペースなのは、現在5Gで利用されている周波数が3.5GHz帯のみであること、今年3月に予定される3GPPでの国際標準規格「リリース16」の完成に歩調を合わせたことなどが挙げられる。
韓国で5Gに割り当てられた周波数帯は3.5/28GHzだが、28GHz帯については2020年下半期に利用を開始する。SA(スタンドアローン)方式は2020年上半期中の予定。現在の5Gは初期段階であり、現地の通信キャリアも超低遅延や多数接続といった5Gならではのサービスを幅広く実感するには3年はかかるだろうと見ている。
ソウル市地下鉄駅での5GスマートフォンのAR機能を活用した芸術鑑賞イベントの様子(筆者撮影)