今では多種多様なサービスが提供されるようになったSD-WANだが、残念ながら「コレ1つで何でもできる」ものは存在しない。どれも一長一短があり、ユーザーは自社の課題や用途にあったサービスを選ぶ目を持たねばならない。
その意味で興味深いアプローチを行っているのがソフトバンクだ。特徴の異なる複数のSD-WANを開発し、顧客企業の課題や目的に合わせて使い分けている。2018年から「SD-WAN Type H」と「Type F」を提供。そこに間もなく「Type X」が加わる。
既存環境はなるべく活かす ブレイクアウトに適したType FType H/Fはそれぞれファーウェイ/フォーティネット製品を活用している。Type Hは多機能・高機能が売り。Type Fはインターネットブレイクアウト機能とセキュリティ機能が特徴で、SaaSを利用する企業で主に採用されているとソフトバンク ソリューションサービス第2部 部長の南雲勉氏は話す。「いま最もニーズがあるのがブレイクアウト。Office 365等を使うお客様がネットワークにボトルネックを抱えており、Type Fはそれを解決できる」
ソフトバンク 法人プロダクト&事業戦略本部 ソリューションサービス統括部 ソリューションサービス第2部 部長の南雲勉氏(中央)と松浦宗介氏(左)、SE本部 インダストリー第3統括部 西日本SE第1部 ソリューションSE課 課長の阪本修一郎氏
日本企業の多くが、SaaSトラフィックの増加によるセンター拠点のインターネットゲートウェイ/回線の逼迫に悩まされている。Type Fはこの解決策として幅広い企業に受け入れられているという。西日本SE第1部 ソリューションSE課 課長の阪本修一郎氏は、「ゲートウェイを増強すると多大なコストがかかるが、SD-WANで拠点からブレイクアウトすれば手軽にトラフィックを逃せる。この用途でのType Fの導入が本当に多い」と話す。
このType F/Hの開発において、ソフトバンクが重視したのが「お客様の既存のアセットを活かすこと」(南雲氏)だ。SD-WANを導入する拠点と他の拠点がシームレスに通信できるようにすることで、顧客企業は既存環境を大規模に刷新することなく「まず課題のある拠点だけをSD-WAN化して差し迫った課題を解決できる」(阪本氏)のだ。
一部の拠点からSD-WANを導入できれば、ユーザーは、ネットワーク可視化や管理ポータルでの一元管理といったSD-WANの使い勝手、効果を容易に確認できる。これまでIP-VPN等の閉域網を軸としてきたWANから、インターネットをより活用した次世代型のWANへと移行する“前準備”にもなるわけだ。ソフトバンクの顧客企業では、「SD-WAN導入拠点を徐々に広げたり、インターネットを活用した次期ネットワークの検討などにも活かしていただける」(阪本氏)良い流れができつつあるという。