コンテナで進化するNFV 5G網は“クラウドネイティブ”に作る

コンテナやマイクロサービス等の“クラウドネイティブ”技術の導入により、ネットワーク機能の仮想化が新たな段階に突入する。まずターゲットとなっているのは、今まさに構築が始まった5Gネットワークだ。

ネットワーク機能を仮想化し、汎用サーバーの仮想基盤上にソフトウェアとして実装するNFV(Network Functions Virtualization)が登場してから7年ほどの月日が流れた。

この間、NFVは着実に浸透し、ネットワークの作り方は大きく変化した。ハードウェアとソフトウェアの分離が進み、ネットワーク構成の自由度と柔軟性が向上。マルチベンダー化とオープン化も進展した。

だが、進化はこれで終わりではない。NFVがもたらした柔軟性や拡張性といった効能をさらに高めようとする新たな潮流が生まれてきている。クラウドネイティブだ。

仮想マシンからコンテナへ「クラウドネイティブ」は、アプリケーションの開発手法として昨今注目されている考え方だ。様々な定義がなされているが、一般的には、クラウド環境に最適化されたシステムやサービス、およびそれを実現するための手法を指す。核となる技術要素は、コンテナやマイクロサービスだ。

GoogleやAWSに代表される大手プラットフォーマーでは、これらの技術を用いて開発されたクラウドネイティブ・アプリケーションが主流となっている。コンテナ技術による小型サービスの集合体としてアプリケーションを実現することで、小型サービス毎に開発・機能追加を行い、アプリケーションの開発・展開のサイクルを迅速化できる。

また、コンテナは、OSまで含めてカプセル化する仮想マシン(VM)と異なり軽量なため、起動時間が短く、リソース消費の効率がよいなどの様々なメリットがある。

このクラウドネイティブな技術をネットワークの世界に持ち込む動きが始まった。

起点となったのが、2018年9月にLinux Foundationが行った発表だ。400社超が参加するオープンソース推進団体CNCF(Cloud Native Computing Foundation)とLFNetworkingが、NFVによる仮想ネットワーク機能であるVNF(Virtual Network Function)から、CNF(Cloud native Network Function)への移行を促進する方針を打ち出した。世界各国の通信事業者等が参画してNFVを推進するLF Networking内のプロジェクト「ONAP」と、CNCF傘下のKubernetesプロジェクトが、VNFからCNFへの進化に向けて協業。CNFは、5Gネットワークにおける中核技術の1つになると期待されている。

VNFの進化形「CNF」で5GコアもRANもコンテナ化CNFは、オープンソースのコンテナオーケストレーションシステム「Kubernetes」上で動作するネットワーク機能だ。VNFをコンテナ化した“Container Network Function”とも言い換えられよう。従来のVNFがVMをベースとしたのに対し、CNFはコンテナをベースとする。

このクラウドネイティブ技術を活用して、5Gのコアネットワークや仮想RAN(Virtual Radio AccessNetwork:vRAN)、MEC(Multi Access Edge Computing)向けソリューションの開発を進めているのが、シスコシステムズやレッドハットだ。

シスコの業務執行役員で情報通信産業事業統括 システムズエンジニアリング本部長を務める吉田宏樹氏は「キャリアネットワークにおいてNFVは着実に進んできた。次の段階として今、5G Core(5GC)をコンテナベースで開発している」と語る。

(中央)シスコシステムズ 業務執行役員 情報通信産業事業統括 システムズエンジニアリング本部・本部長の吉田宏樹氏、(左)情報通信産業事業統括本部 ビジネス開発事業本部 ビジネスデベロップメントマネージャーの桂田祥吾氏、(右)米シスコシステムズのモバイルコアBU-CTO Principal 5G Architectのアネアス・ドッドノーブル氏
(中央)シスコシステムズ 業務執行役員 情報通信産業事業統括 システムズエンジニアリング本部・本部長の吉田宏樹氏、(左)情報通信産業事業統括本部 ビジネス開発事業本部 ビジネスデベロップメントマネージャーの桂田祥吾氏、(右)米シスコシステムズのモバイルコアBU-CTO Principal 5G Architectのアネアス・ドッドノーブル氏

5GCでは、コントロールプレーンとユーザープレーンを分離するモデル「CUPS」(Control and User Plane Separation)が採用される。LTE時代には一体化していたコントロールプレーンとユーザープレーンを分離することで、それぞれ別個に開発や機能進化が可能になり、さらにネットワークの構成と機能配備も柔軟に行えるようになるためだ。例えば、コントロールプレーンはコア側に集中させて、ユーザープレーン機能(UPF)をエンドユーザーに近いエッジに配置したり、制御処理の要求が急増した場合にコントロールプレーンだけをスケールさせたりといった具合だ。

このうち、「コントロールプレーンは基本的にコンテナ化する」と吉田氏は明かす。一方、UPFには高い転送能力が求められるため、当面は従来のVNFを用いるという。VNFでは、カーネルをバイパスして直接ハードウェアを制御するDPDKや、FPGAやスマートNIC(Network InterfaceCard)といった専用ハードウェアへのフォワーディング処理のオフロードと、パケット転送処理の高速化手法がすでに確立している。

月刊テレコミュニケーション2019年11月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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