「残念ながら、デジタライゼーション(デジタル化)による変革は海外のほうが早い」――。
宮内社長は、デジタル技術を活用して既存産業に変革をもたらしている数々の事例を紹介しながら、日本企業の状況に物足りなさを示した。同氏が具体例として挙げたのは次のようなものだ。
ソフトバンク代表取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏
1つは、小型の自動運転車両を開発する米nuro(ニューロ)。大手スーパーマーケットの食品配達に使われているほか、ドミノ・ピザと提携して自動運転によるピザ配達もテスト中だ。
2つめは建設業だ。ソフトバンク・ビジョン・ファンドから約900億円を調達した米KATERRAは、建設作業の全行程に関するデータを一元管理することで工期の70%短縮を実現したという。
米KATERRAのビジネスモデルのイメージ
中国ではGuazi(瓜子)、Zhong Anの2社が、中古車販売および保険業界で新たなビジネスを展開している。
Guaziは、中国最大級の中古車販売プラットフォームを展開する。センサーデータやカメラ画像をAIで分析することにより、迅速かつ公平な中古車査定を実施。査定数は4倍に増加した。加えて、売り手と買い手を直接結びつけることで顧客満足度の高いサービスを行っている。
Zhong Anは、顧客の属性や行動データをAIが分析し、保険金を自動算出する新たな保険商品を開発。申込者の数は年間4億人にも及ぶという。
Zhong Anの保険サービスのイメージ
まだ5Gがない状態でも、世界は変わり始めている
フード配達の米DoorDashは、レストランと利用者をマッチングするプラットフォームサービスを展開する。顧客の特性を把握するAIがオススメの店・メニューをレコメンドし、配達時にもAIが最短経路を算出。配達時間を正確に通知する。
カーリース業界では、米fairが新たなカーシェアのビジネスを展開している。クルマを借りたいドライバーをAIが審査し、承認されればアプリ上の簡単な手続きでディーラーからクルマを借りられる。期間非固定で好きなクルマを乗り換えることができる、長期リースと短期レンタルの中間的なサービスだ。