熊本地震の際に日本マイクロソフトから、クラウドシステムとデバイスの無償提供と同時にノウハウも含めた支援をいただいた。そこで、クラウドの利便性を身をもって体験したことから、通常使用に加えて災害時にも使えるというメリットを改めて強く認識した――。
日本マイクロソフト本社で開催された記者説明会の冒頭、熊本市の大西一史市長はそう切り出した。
熊本市の大西一史市長(左)と、日本マイクロソフトの平野拓也社長
約2年前の2016年4月、日本マイクロソフトは、同月時点で250カ所以上あった避難所と物資拠点、市役所間の情報連携のためクラウドサービス「Office 365」とデバイス「Surface」などを熊本市に提供した。合わせて、東日本大震災において同社とともに支援を行ったNPOのノウハウも熊本市に紹介。パートナー企業などとも連携して、各避難所の管理者・職員が情報連携に活用する「くまもとRねっと」の構築など様々な支援を行った。
そうした取り組みがベースとなり今回、熊本市行政のICT基盤をマイクロソフトのクラウドに全面的に移行することを決定。マイクロソフトの統合型情報共有クラウドサービス「Microsoft 365」を導入し、2019年4月をめどに約7000人の職員が利用する新たな情報基盤を構築する。
また、同プロジェクトは熊本市立の小中高等学校全136校の教職員、約4500名の働き方改革も対象としており、Microsoft 365 Educationも合わせて導入する。プロジェクトの対象は合計で1万2500名となる。日本マイクロソフトの平野拓也社長は「全国の自治体でも類を見ない規模。行政と教育の両方のICT環境を整備する意義は大きく、自治体では最大規模のデジタルトランスフォーメーションの取り組みだ」と話した。
なお、大西市長によれば、熊本市は本プロジェクトに5年間で約47億円を投じる計画だ。2018年度が庁内システムの更改期に当たることもあり「Microsoft 365をフル装備する。長年にわたり働き方改革に取り組むマイクロソフトの改革マインドも含めて全面的に支援をいただく」と述べた。
「AIの改善アドバイス」も活用
働き方改革の具体的な内容としては、Microsoft 365を全庁で採用することによって、時間や場所にとらわれない市民サービスの提供や市民活動を推進するための環境を整備。市民からの問い合わせにSkype for Businessのビデオ通話で対応するといった新たな市民サービスの検証も行う。
また、PCの操作ログ等をAIが解析して働き方の可視化・分析を行うマイクロソフトの「My Analytics」機能も活用する。働き方の傾向やくせなどを定量データで可視化するほか、AIが改善のための助言を行う機能などを装備しており、プロジェクトの効果測定等にも活かす考えだ。
市職員・教職員の両方で幅広い取り組みを進める
教職員に関しても、クラウドシステムを活用して文書のデジタル化や授業コンテンツの共有、テレワーク運用などを推進。校務の効率化と時間外労働の削減を図る。