「IoTでオフィスの知的活動を高める。さらに、消費エネルギーや維持管理コストを削減できる可能性もある。我々の持つ建築、都市、環境技術と異業種の知見や技術を融合することが有効と考え、ソフトバンクとの業務提携を決めた」
東京スカイツリーや東京ミッドタウンをはじめ、これまで世界250都市でプロジェクトを手掛けてきた日建設計の亀井忠夫社長は記者会見の冒頭、業務提携の意義と狙いについてそう述べた。
日建設計 代表取締役社長の亀井忠夫氏(左)と、
ソフトバンク 代表取締役副社長 兼 COOの今井康之氏
今回の提携ではソフトバンクが提供するIoTやロボット、AI(人工知能)技術を活用し、次の2つを目指すという。1つは、オフィスで働く人の「知的生産性を飛躍的に向上させるなど、付加価値の高い空間を作る」こと。もう1つが「設備管理コストや環境負荷の低減」だ。
両社の技術力を融合し、次世代のスマートビルディングの実現を目指すという
前者については、ビル内に設置したIoTセンサーから得られるデータを使い、空調や照明を調整してより快適に働ける空間を実現したり、オフィス内の人の位置情報データを分析してワークスペースの最適化を行うといったことも可能という。コミュニケーションを円滑化するソリューションなどの開発も進め、「働き方改革をサポートするオフィス空間」の実現を目指すと亀井氏は意気込みを述べた。
清掃ロボや警備ロボも導入へ
一方の設備管理コストや環境負荷の削減については、ソフトバンクの今井康之副社長がより具体的に、開発・提供するソリューションとその効果について説明した。
同氏によれば、ビルの運用管理に関わるコストは「建築時にかかるイニシャルコストの約5倍にもなる」という。IoTによってその運用管理費が削減できれば、効果は絶大だ。「建設時に運用費のことまで検討しながら建てるビルとそうでないビルでは、圧倒的に価値が変わる」とそのメリットについて力説する。
ソフトバンクでは「清掃」「警備」「設備管理」の3つの領域でIoTやロボット、AIを活用したソリューションを提供する考えだという。
IoT、AI、ロボットを活用することでビル運用費を削減する
例えばビル清掃に関しては、すでに米国で実際に運用されているbrain coap社の清掃ロボットを紹介した。人や障害物を避けながら施設内を移動して拭き掃除を行うロボットだ。作業員が一度ルートを教えれば、次回以降はその通りに走行し、さらに自動的に最適なルートを割り出すこともできる。
警備に関しても同様で、監視カメラや警報機などを使う現在の機械警備に加えて「ロボットの活用を検討している」という。設備管理については、監視カメラや温湿度計といった各種センサーから収集したデータを基に、空調や電気設備を制御するなどの手法で、ビル設備の運用管理を高度化する。
各種センサーデータを活用して空調・電気設備を遠隔制御することで設備管理コストを削減する
このように「様々なデータを使ってサービスとして展開するための仕組み(の構築)をソフトバンクが担う」と今井氏。これらのIoTソリューションによって「ビル運用管理コストの少なくとも40%は削減したい」という。なお、活用するのはビル内の設備から収集するデータだけにとどまらず、ソフトバンクが持つ「人口流動データも使って、ビル周辺の街区の設計にも活用できるようなプラットフォームの実現を目指すと展望した。