――コラボレーション事業の現状から聞かせてください。
マッティー 2017年会計年度(2016年8月から17年7月)も堅調な成績を残せると思っています。
シスコは今、オンプレミス製品の販売とSIで収益を得るビジネスから、クラウドを軸としたリカーリング・レベニュー(繰延収益)を基盤とするビジネスにシフトしています。そのため一時的に下がり気味の部門もありますが、コラボレーション事業はこのシフトが最も進んでいます。
今は、ソリューションの在り方がクラウドに移行する過渡期であり、そのため数字を伸ばせてはいませんが、ただし、テレビ会議端末やIPフォンなどエンドポイントの販売数は従来通りで、需要も衰えていません。
マーケットシェアは確実にキープしつつ、同時に変革を着実に進めているという状況です。
――オンプレミス型からクラウドへの移行は急速に進むと見ていますか。
マッティー 将来的には圧倒的にクラウドが多い状況に持っていけると考えています。ただし、一気に移行できる企業ばかりではなく、特に大企業ではゆるやかに進みます。そのため、ハイブリッド型も増えています。
そうしたゆるやかな移行を可能にする仕組みが必要です。そこで、新たなライセンス体系として「Spark Flexプラン」を用意しており、間もなく日本でも提供を開始します。
――従来とどのように違うのですか。
マッティー これまでは、現在お使いのライセンスを一旦破棄して、新たにクラウドのライセンスを購入していただく必要がありましたが、Spark Flexプランでは、既存ライセンスを使い続けながら好きなタイミングでクラウドに移行できます。
もしくは、本社はオンプレミスのままで、引っ越しする拠点をクラウドにして本社とつなげたい場合にも使えます。拠点の会議端末を増やす時に、本社の設備はそのままで、拠点側をクラウドにつないで端末を増やすなど、柔軟に拡張できます。
キャリアとの協業を柱に――4月にKDDI、6月にNTTコミュニケーションズ(NTTコム)と、通信キャリアとの協業を次々発表しています。狙いについて教えてください。
マッティー お客様のクラウド化ニーズに応えるには、ソリューションの選択肢を増やすことも重要です。
また、我々自身がクラウドビジネスにシフトするとなると、もともとサブスクリプション形式のサービス販売に長けた通信キャリアとの協業は欠かせません。
NTTコムはこれまでもシスコのパートナーとして、Cisco Unified Communications Manager(CUCM)の機能をクラウドで提供するサービスを行っていましたが、新たにSparkもメニューに加わりました。
オンプレミスでCUCMを運用していたお客様がクラウド化しようとする場合、閉域網で使えて、かつカスタマイズにも対応できる既存のサービスと、より先進的なチームコラボレーションが可能になるSparkを選択できるようになります。両サービスの連携機能も提供される予定で、お客様の選択肢が広がります。
――KDDIともSpark販売で協業しました。こちらは中堅中小企業への展開が主目的ですか。
マッティー KDDIは中堅中小企業に強く、現時点では、大手企業をターゲットとするNTTコムと棲み分けしています。
大手企業は電話の使い方も特殊で、カスタマイズ要求が多くなります。そのためNTTコムのサービスは、機能を作り込んで提供できるプラットフォームの柔軟性を強みとしています。
一方、中堅中小企業は、ある程度の機能セットが揃っていればサービスをどんどん展開していけます。身軽さが重要であり、KDDIとの協業ではそこに期待しています。