――2009年度の事業計画が発表になりましたが、光サービスは来年度末で東西合わせて約1400万契約の見込みであり、2010年光2000万の目標達成が厳しくなりました。この目標数値をどうするかは5月の決算説明会で三浦惺社長からお話があるそうですが、宇治副社長はどのような感想を持っていますか。
宇治 未達、未達といわれていますが、これだけの規模で光サービスを展開しているのは世界で日本だけであり、情報通信基盤の整備という意味では世界のトップクラスであることは確かです。これはNTTグループとしてかなり力を入れてきた成果ですので、引き続き日本のブロードバンドインフラの充実のために役立つよう、注力していきます。
――光サービスの実績では、東西の格差が拡がっています。この要因はどう見ていますか。
宇治 競争環境と地理的な環境の2つが大きいと思っています。
競争環境では、西日本エリアは電力系事業者との競争が激しいことは周知の通りです。
地理的環境では、東日本は首都圏があり、ここを中心に展開すればかなりの実績を得ることができますが、西日本は都市圏が各地に散らばっており、山間部や離島も多い分散型マーケットのため、展開の難しさがあります。
――昨年、東日本エリアで、06年から集合住宅向けに提供してきた「光配線方式」の展開を、中小規模集合住宅へ向けて強化されましたが、その効果は。
宇治 かなりあると思っています。集合住宅の場合、1室のお客様がフレッツ光を利用したいと思っても、建物に入線していなくて加入できないということが結構ありました。光配線方式はVDSL方式のような大きい集合装置が不要なので、共用スペースが少ない小規模物件にも適していると思います。
これで、大きなターゲットである集合住宅に攻勢をかけられる環境は整いました。
光の使い勝手を訴求する
――この世界的な不況のなかで、安価なADSLサービスが見直されており、さらに値下げを実施したADSL事業者もあります。そうしたなかで、光サービスの料金値下げを期待する声もあります。
宇治 光とADSLとでは機能・性能が明確に違います。確かに、お客様によっては値段の差に見合った価値を見出していただけない方もいらっしゃると思いますが、少なくとも今は光サービスは赤字であり、赤字をさらに増やしてでも加入獲得を目指すという戦略は採れません。割引をまったく考えていないというわけではなく、現在も工事無料やキャンペーンなどでそれなりのサービスは行っていますが、ベースの料金は据え置きます。
――衝撃的な値下げはないということですね。
宇治 当面はないですね。
簡単なEメール程度の利用のお客様はADSLと比較して高いと思われるかもしれませんが、トリプルプレイという観点では、電力系事業者やCATV事業者と比較しても高くはないと思います。
ですから、今は値下げ云々よりもお客様に光サービスの本当の使い勝手を理解していただく施策のほうが意味があると思っています。
――そういう意味では付加価値部分をいかにして高めていくかがポイントですね。
宇治 せっかく光ファイバーを張っているのですから、それを使ってさまざまなサービスを利用できるようにしなければなりません。
そのうえで、サービスの割り勘というか、いろいろなことができることによってお客様にとって光サービスの価値観ができてくるようにしたいと思っています。
今は光インフラの整備も進み、「入りたい」というお客様には入っていただけるフェーズには来ました。あとは、どう「入りたい」と思っていただくか、あるいは入っていただいたお客様に「こんな使い方もできますよ」という提案ができることが大切であり、そのようなサービスをどんどん作っていきます。