商用サービスの開始から、早1年半。いまだにNGNサービスを積極展開するサードパーティベンダーが表れない要因の1つには、アプリケーション開発環境が未整備な点も挙げられる。開発にかかる人的・経済的コストという足枷を外さなければ、アプリベンダーの積極参戦も、市場の活性化も望めない。
この課題を解消し、誰もが簡単にNGN対応アプリを開発できる環境を広げるためにNGNアプリの開発キット「SUPREE Vision Premier(スプリー ビジョンプレミア)」を提供しているのがソフトフロントだ。
「開発期間8カ月」が1週間に
「SUPREE~」は一言で言えば、光ネクストとひかり電話を使用した高音質電話/テレビ電話アプリの開発キット(SDK)だ。NGN-SIPの通信制御、メディア制御、UNI仕様への対応など、NGNメディア通信に関わる部分はすべてこのSDKに任せ、テレビ電話機能を簡単かつ柔軟にベンダーの既存システムやWebアプリに組み込める(図表)。
図表 SUPREE Vision Premirを活用したNGNサービス提供のイメージ |
一からNGNアプリを開発しようとすれば、先述の制御関係の開発に加え、その前段階としてSIP技術やNGN仕様の調査、アプリの開発、検証などが必要だ。「テレビ電話を開発するだけで8カ月以上はかかるだろう。しかし、このキットを使えば1週間でできる」と研究開発担当取締役・佐藤和紀氏は語る。
例えば、VBAでもわずか数十行のプログラムでテレビ電話が実現でき、普段使っているExcelやAccessに簡単にコミュニケーション機能が付加できる。
同社はこの開発キットをベンダーに無償で提供(Webサイトからダウンロード)。ベンダーは開発期間内(6カ月間)は自由に使用でき、有償で技術サポートも受けられる。ソフトフロントは、開発ベンダーがアプリケーションを実際に展開する段階で、その使用料を得る仕組みだ。使用料は売り切り型で、エンドユーザーの1インストールPC当たり630円程度。8月から提供開始した機能拡張版「SUPREE Vision Premier Pro」で1000円程度だ。
SaaSベンダーも注目
開発が容易になり柔軟性も増すことで、どのようなサービスが可能になるのか。「SUPREE~」の使いどころについて、佐藤氏は2つの例を挙げる。
1つは、在宅介護支援などの特定業務に特化したテレビ電話サービスだ。顧客の要望に応じて一般的なテレビ電話端末を細かくカスタマイズすることは難しいが、「SUPUREE~」とNGN機能を組み合わせれば、PC上で容易に専用アプリが開発できる。
もう1つが、Webアプリとの組み合わせだ。クリック操作でテレビ電話ができるSaaS型グループウェアなどが簡単に実現できる。
佐藤氏によれば、既存のWebアプリに簡単に通信機能を付加できる点には、「今まで通信アプリとは無縁だった、テレコム分野以外のアプリベンダーが大きな関心を示している」という。独立したインフラとしてではなく、電話を1つのアプリとして自由に活用できるようにするのが、NGNの本分。「そこに目をつけたベンダーをNGNの世界に引っ張ってきたい」考えだ。
「SUPREE~」を使った具体的なアプリとしては、数カ月前にすでにプロトタイプが完成しているイリイのCTIソリューション「BIG CTIコネクター」がある。近いうちに製品版の発売が行われる予定で、具体的なNGN活用例が登場することで、他のベンダーの動きも活発化しそうだ。