製造業向けIoTプラットフォーム「FIELD system」(FANUC Intelligent Edge Link and Drive system)を開発するファナックは2016年7月28日、NTTと会見を行い、FIELD systemの開発で協業することを発表した。NTTグループからは、NTT持株、NTTコミュニケーションズ、NTTデータの3社が参画する。
ファナック代表取締役会長の稲葉善治氏(左)と、NTT代表取締役副社長の篠原弘道氏
FIELD systemは、製造業の生産システムにIoTを適用し、可視化や分析、遠隔制御を自動化するためのプラットフォーム。ファナック代表取締役会長の稲葉善治氏は「AIを実装することで、予防保全や機械同士の協調、最適化などが可能」なプラットフォームとして開発を進めている。また、オープン性も特徴で、公開されるAPIを使ってパートナーが製造業向けのIoTアプリケーションを開発して提供することも可能になる。
ファナックが開発を進めるFIELD systemのイメージ
NTTがエッジコンピューティング技術を提供
ファナックはこのFIELD systemの実現に向けて、AI技術を持つPreferred Networksや、ネットワークベンダーのシスコシステムズ、システムインテグレータのロックウェルと協業してきたが、今回、ここにNTTグループ3社が加わる。稲葉氏は「FIELD systemをできるだけ早く多くの製造現場で使えるようにするため」と協業の意義を述べた。「製造業のIoT化に向けて目指す方向性が一致したのが協業の決め手。早期の商用化を目指す」という。
NTTの技術提供、導入支援、アプリケーション開発により早期商用化を目指す
NTTグループ3社の役割は、次の通りだ。
NTT持株は、NTT研究所が開発を進めてきたエッジコンピューティングの技術を提供する。代表取締役副社長の篠原弘道氏は、「5年以上前からエッジコンピューティングを手掛けており、2011年にはフレッツ・ジョイント、その後もひかりTVブラウザですでに商用化している」とこれまでの実績を紹介した。また最近では、トヨタおよびPreferred Networksとともに行ったぶつからないクルマの実証実験でも、NTTのエッジコンピューティング技術が使われている。
FIELD systemにおいては、ユーザーである製造業の敷地内や工場内にエッジ処理を行うサーバーを配置することを想定しているが、そのエッジサーバーへのアプリケーション配信機能と、収集したデータを他クラウドやシステムと交換するIoTデータ交流機能で、NTTのエッジコンピューティング技術を活用する。
FIELD systemへのエッジコンピューティング技術の適用
なお、適用するケースによってエッジコンピューティングに求められる要件も異なるが、そうした多様な要件に応じられるよう、「オープンソースも含めていろいろなプラットフォーム上で稼働するようになっていることが我々のエッジコンピューティングの特徴」と説明した。また、クラウドとエッジでアプリケーション処理を分散することで、クラウドに転送するトラフィックが抑制できたり、外に不要なデータを送信しなくてすむためセキュリティの強化にもなるなど、さまざまな効果が期待できるという。